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韓国ドラマ「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」感想〜最後の魔法にかかるには

「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」 나의 아저씨 2018年 tvN

★★★★★

イ・ソンギュンにIU、更に「シグナル」「ミセンー未生ー」の演出家ですからすごく期待しました。面白くないわけがないって。でも面白かったとは言い難い作品です。

実は私は2度挫折しています。出だし面白くないというのは韓国ドラマではあるあるで、ちょっと我慢して見ているとエンジンがかかってくる場合も多いですが、このドラマは更に上をいくツワモノです。

出だし重すぎて辛い、そしてそれが長く続く、いつまで経っても面白い、楽しいと思って見ることはできませんでした。

それでも今回最後まで見ることが出来たのは、登場人物のキャラがとても魅力的だと気づいたからです。そして、そのキャラを際立たせる俳優陣の演技力の高さゆえです。

例えばセリフのない場面でも仕草や目の動きなどが残像のように頭にいつまでも残りました。そしてどんどん引き込まれていきました。

最後まで見ることが出来た時このドラマの世界が見えてきます。ずっと重苦しい辛い道を歩いてきたけれど、最後は感動で胸がいっぱいになり、まるで魔法にかけられたように満足感で満たされます。

たくさん、たくさん、考えさせられるドラマでした。

画像:chosun.com

イ・ジア(IU)
パク・ドンフン(イ・ソンギュン)
イ・グァンイル(チャン・ギヨン)

ただ息をしているだけのように生きているジアン(IU)は大手建設会社の契約社員となる。配属された部には部長のパク・ドンフンがいた。

ジアンはドンフンの妻と不倫関係にある社長のト・ジュニョンと秘密の契約を結び、ドンフンを陥れようする。

一方ドンフンはジアンと関わるうちに、彼女が子供の頃から苦労し続けていることを知り、気にかけ優しく手を差し伸べる。

「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」公式サイト

以下ネタバレあります。

イ・ソンギュンさんは声が素敵、演技も絶品でした。ドンフンの兄役のパク・ホサンさんも相変わらずいい味出してるし、ほんの少ししか登場しない俳優さんも素晴らしい人ばかり。演技派のベテラン役者さん達の中でIUも大変だったろうと思いましたが、彼女も素晴らしかったです。

今回ようやく最後まで見て、なんといえば良いか・・たぶん「見てほしい」あるいは「見るべき」ドラマということになるでしょうか。心から「あ〜見て良かった」と思いました。

あるサイトではヒーリングドラマと紹介されてました。このドラマを見終わって心が浄化されたことに気づく、まさにヒーリングドラマです。

これが映画だったらどうだろう・・とも思いました。

 

私は最後までジアンを好きになれませんでした。
ジアンは借金を抱え自分が生きるだけでも精一杯なのに、祖母の面倒を見ながら生活しています。自分の楽しみも自由もやすらぎもない。

運良く建設会社で働くことになりましたが、職場でのコミュニケーションはゼロ。もちろん笑顔も無し。境遇を気の毒には思うけれど、感じ悪すぎで周りの反応もさもありなんです。

おじさん=ドンフンが気にかけ暖かく見守ることで少しずつ変わっていくけれど、普通ドンフンのようにここまでする人いないでしょ。まして、ドンフンの声を日夜聞いてカチカチに固まった傷だらけの心が癒やされても、これ盗聴ですし。

だだ少しずつ心が動いていくジアンはやはり可愛いなと思いましたし、私にはまだまだ少女にみえました。ドンフンもそうですが、例えばドンフンのサッカー仲間や居酒屋の女将のように自分にバリアなく近づいてくる人たちは始めてだったでしょう。その温かさ、人情がジアンの心の薬でした。

ジアンがドンフンを尊敬し、好きなのは確かですが、これが恋愛感情、愛かというと私にはちょっと疑問です。

 

ドンフンはずっと「いい子」と言われて大きくなったんじゃないでしょうか?自分はそんなんじゃないと思っていても周りは「いい子」と見る。そしていつしか「いい子」の呪縛にかかり、そのまま大人になったんではないかしら?自覚はないけど自ら枠を作ってしまって生きずらくなってしまった。

仕事ぶりは誠実で実力もあり、部下たちからは信頼され尊敬されている。だから差出人不明の商品券の事件でも、意図せず英雄扱いされされちゃったり。

それに、兄・弟があんな感じですから子供の頃から母の期待を一身に背負っていたと思います。誰からも慕われているし、頼られている。

気づかぬうちにそういうものが圧になって、羽目を外すこともできず、ある意味自分を押し殺しながら生きてきたのでしょう。端から見ると羨ましいほど立派に生きているように見えても、自分では自信を持てない。

そんな生き方が辛くても誰にも話せない・・。

最後にドンフンが一人泣くシーンがあります。ドンフンが「いい子」の呪縛から解き放たれた瞬間だと思いました。

一人カップ麺をすすりながら、こんな生活を望んでいたわけではないと自分に対する怒りのようなものが吹き出したのでは。これが自分の人生なのか!って。

妻の不倫騒動は社内でも知られることとなりました。一大スキャンダルです。妻はドンフンの考えに従うと言いながら、結局遠く離れて行きます。

ドンフンは彼女をすっかり許したいと思いながら、やはり「しこり」があるのでしょう。それでも離婚できない。それが辛いし情けないとも思っている。

会社では権力闘争で振り回され、勝って常務に昇進したものの、その座を心から望んでいたわけでもないのです。いったい、自分は何してるんだろうって。自分は何なんだって。「いい子」にとことん疲れてしまったんでしょう。

これまでを振り返り、こみ上げるものがあって嗚咽になりました。でもこれで彼は自分らしく生きられる人間にに生まれ変わったのだと思います。吹っ切れて心が自由になりました。

ジアンの盗聴で、まるごと自分のすべてを知られてしまったことが結局は彼の救いになったのだとしたら、これはジアンのおかげといえるのかもしれません。

 

イ・グァンイルはサラ金業者でジアンを執拗に追いかけ、嫌がらせをします。彼はそうすることでしかジアンに自分の存在を見せる事ができなくなってしまっています。好きなら別のアプローチもできるのに。

でも、父親を殺され人生が変わってしまった事を思えば、これも仕方のないことかな。そして誰も彼を気遣わなかった。見方を変えれば、この人も大人の犠牲になってしまった子供です。

最後はジアンを助け、ジアンを手放します。これが彼の愛でした。切ないです。でも、本来の自分の姿をジアンが知ってくれているということが彼の生きる力となると思います。演じたチャン・ギヨンがとても良かったです。

一年後、ドンフンは起業し社長となり以前の仲間たちと共に生き生きと仕事をしています。兄は復縁し、弟はまた映画の道を模索しはじめました。ジアンは普通のOLになって笑顔も取り戻しています。

長く泥沼のような中にいても、一歩踏み出すことができるなら新しい世界が待っています。そのきっかけは縁。

ジアンのおばあさんが「誰でも縁というものは持っている。どんな縁も不思議で尊い物。幸せに生きることで恩返しをしなさい」と言ってました。

最後はドンフンとジアンは握手をして別れますが、私はこの二人が恋愛するとは思えません。ドンフンはそろそろ妻を迎えに行くような気がします。
そういう握手だったのではと・・そしてジアンもそれをわかっている。私はそんなふうに見終えました。

グァンイルの行末が心配ではありますが、彼も本来の自分を取り戻し幸せでいてほしいなと思います。 

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。