「ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜」 보쌈 운명을 훔치다（ポッサム-運命を盗む）
2021年 MBN
★★★★☆
物語の内容だけ見るとドロドロ愛憎劇と言えなくもないですが、しっとりとした雰囲気の落ち着いたドラマという印象です。もちろんドロドロ感などありません。
登場人物の関係もよく練られた物語でしたが、歴史劇としての深みは感じませんでした。ハラハラの展開の中にもクスっと笑える部分もあり、緊張感は薄く肩肘張らず軽く見られるドラマだと思います。
少し長く感じましたがギアチェンジのように背景が変わるので、飽きずに最後まで見ることが出来ました。ただもう少し無駄を省いてスピード感があっても良かったのかなと思います。
キャストではユリ（少女時代）が素晴らしかった。気高さ、内に秘めた熱い心を感じさせる演技で驚きました。アイドルではない女優の姿でした。このドラマの翁主役は本当に彼女にピッタリ。恐れ入りました。
主演はチョン・イルでしょうが、イケメンスターの彼も霞んでしまうほどのユリの見事な演技は必見です。
画像：MBN
バウ／キム・デソク（チョン・イル）＝盗みやポッサムを生業とするごろつき
ファイン翁主／スギョン（クォン・ユリ／少女時代）＝光海君の娘、イ家次男に嫁ぐ
イ・デヨプ（シン・ヒョンス）＝イ家の三男
イ・イチョム（イ・ジェヨン）＝左議政、翁主の義父
チョ尚宮（シン・ドンミ）＝ファイン翁主の乳母
チュンベ（イ・ジュニョク）＝バウと共に働く友人
チャドル（コ・ドンハ）＝バウの息子
「寡婦を誘拐して再婚させること」＝ポッサムを生業の一つとしているバウ。ある日高額報酬のポッサムを引き受けたが、間違ってイ家の嫁で王の娘：ファイン翁主をさらってしまい途方に暮れる。
イ家の当主イチョムは密かに翁主を探すが見つからず、苦肉の策として亡き夫の後を追って命を絶ったと嘘をついた。しかしその嘘が公になることを恐れ、翁主の命を奪おうとする。
追手が迫りバウは翁主がお荷物と感じつつも見捨てられず、家族のふりをして逃げる。食べることにも苦労する毎日、翁主は自ら皿洗いをして稼いだ金を指し出し一人の平凡な女として生きると決意を話す。
バウと翁主の心は次第に近づくが・・。
以下ネタバレあります。
ポッサムという韓国の風習を初めて取り上げた作品だそうで、そういう意味では斬新なドラマと言えそうです。
ポッサムが原因で物語が意外な方向へ進んで先が気になり、ストーリーに自然に引き込まれました。最初のうちはスピード感もあってハラハラもしたし面白かったです。
人間関係の複雑な絡み合いが悲劇に繋がっています。出生の秘密、復讐、執着、嫉妬もありのまさに愛憎劇スタイル。でもドロドロ感はなくキレイに描かれています。ロマンス面もさらりとしているせいかあまり気持ちが入らず、感情移入とまでは行きませんでした。
バウと翁主は次第に心が通い合いお互いを大切に思う気持ちはわかりましたが、ラブシーンがないせいか熱い思いは伝わってこなかったです。そのため中途半端なはっきりしない感じが否めなかったです。
それに反してイ・デヨプの気持ちはストレートに伝わってきました。かつての恋人翁主が今や兄嫁で寡婦ということもあって執着をみせますが、はたから見るとどうにもならない状況だしいい加減に目を覚ませばと思いますが、感情が先走ってしまうのでしょうね。
デヨプについては、もう少し別の描き方もあったのではと悔やまれます。彼が身を挺して翁主を守ったからこそ、バウと翁主も幸せを手にすることが出来たことを思うと、彼の最後はやりきれませんでした。
王は力もなく弱みを握られてはコロコロと気持ちを変えて、まったく情けない人でした。でも最後には自分の愚かさを悔い娘を思う父親の顔を見せて、王といっても一人の人間だと思わせてくれました。
そしてこのドラマでの一番の見どころはユリ演じる翁主のしっとりした魅力です。すぐに惹き付けられました。翁主は最初から最後まで正統派。気高く美しい、翁主とはこうあるべきというお手本のような人でした。それでも普通の幸せを望んだ一人の女性でもあります。
バウはボロを着ていてもどことなく品を感じたし、ただのゴロツキじゃないと思っていました。そう思わせるチョン・イル自身の持ち味、演技は流石です。
ちょっとふっくら気味だったのが気になったけれど、寒くて着ぶくれだったんでしょうか？それとも力強さを感じさせるため？
振り返るとキャストとしてユリとチョン・イルの組み合わせは絶妙だったと感じています。チョン・イルが半歩下がるような雰囲気だからこそ、ユリが引き立ったのではないかしら。（うまく言えないのですが）
画像：news.nate.com
そしてもう一人特筆すべきはバウの息子チャドル役のコ・ドンハ君。愛らしいだけでなくし演技も確かな名子役でした。とても楽しませてもらいました。
物語の最後で悪者は成敗されましたが、なんだかあっけなく唐突に終ってしまった感じ。でもなによりハッピーエンドで良かったです。翁主は公には死んだことになっているからスギョンとして生きて行けばいいということですね。
ただもう少し翁主とバウとチャドルの３人の新しい生活を描いてくれれば、もっと後味良く終われたと思うと少し残念な気持ちです。
コ・ドンハ（고동하） 2012年6月14日生 ソウル
https://www.instagram.com/dongha_ko/
韓国は子役大国。たくさんの子役がしのぎを削っています（たぶん）。子役で成功したからといって大人になってスターになれるわけでもなく厳しい世界だろうと想像します。
それでもコ・ドンハ君には期待感いっぱいです。これからの成長が楽しみです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。
