「悪の心を読む者たち」 악의 마음을 읽는 자들 2022年 SBS
★★★★☆
主演のキム・ナムギルにとっては約3年ぶりのドラマ出演作、お目にかかる機会も少なくなってしまっていたので、とても楽しみにしていました。
韓国初のプロファイラーを描いたサスペンスで、プロファイラーの苦労と苦悩そして成長を描いた内容です。
ロマンス色など皆無で明かるい要素はなく、重い犯罪を取り扱っているので面白いとは言いにくいドラマですが、骨太でずしんと重みのある見応えのある作品でした。
全体を通して息つけるところが無く、ずっと緊張する内容です。実際にあった5件の犯罪を取り上げていて、一つの事件が数話で完結して次に移るという展開でわかりやすかったです。
プロファイラーとして犯人と向き合う心理戦、頭脳戦では何もかもリアルで怖いくらいでした。原作者が元プロファイラーで主人公のモデルでもあると知り納得。
それぞれの犯罪はかなり残酷なもので映像では上手く避けてますが、どうしてもそのシーンや犯人の表情が頭に残り心が騒いでしまうので私は夜は見られませんでした。(つい見てしまい眠れなかったことがありました)
韓国ならではの残酷さが苦手な人には辛いかもしれません。
キム・ナムギルの演技はやっぱり素晴らしかった。淡々とした演技の中にも主人公ハヨンという人間の奥深さや繊細さが伝わってくる流石の演技でした。
そしてキャスト全員が役にピッタリで演技力も確か、脱帽でした。特に犯人役の俳優の皆さんの迫力ある演技は凄かった。考えや思いを語る犯人の狂気が本当におぞましかったし、背筋が寒くなりました。
余計なものは全くない、本格的なサスペンスを好む方にはおすすめです。
ソン・ハヨン(キム・ナムギル)=犯罪行動分析チーム、プロファイラー
クク・ヨンス(チン・ソンギュ)=犯罪行動分析チーム長
ユン・テグ(キム・ソジン)=機動捜査強力班チーム長(刑事)
チョン・ウジェ(リョウン)=新人統計分析官
女性が襲われる「赤い帽子事件」は10ヶ月で12人の犠牲者を出し世の中を震撼させていたが、未だ解決の糸口も見つからない。
強力班ではおとり捜査を行っていたが空振りに終わった。それでもソン・ハヨン巡査部長は諦めずに緻密な捜査を続けていた。
そんな中、女性の全裸死体が見つかり被害者の恋人のギフンが逮捕された。明確な証拠がないまま、自白を元に犯人とされたギフンは犯行を否認しており、ハヨンは自白は強要されたものだと考えていた。
しかしギフンには裁判で懲役12年の刑が下った。
冤罪を疑うハヨンは刑務所にいるある男に会いに行く。その男の口から「ギフンは犯人じゃない」というつぶやきを聞いていて、その真意を確かめるためだ。そして彼から犯人像の分析を聞いた。
ある日住居侵入で捕まった青年の取り調べを行ったハヨンは、自分の考える真犯人像に符号すると感じた。今まで調べ上げたことを突き付けていき、この青年が全裸殺人事件の犯人だと判明した。
このことで冤罪を作った警察の強圧的な捜査が問題となり、さらにハヨンが受刑者から助言を受けたことに非難が集まった。
ここで鑑識チームのクク・ヨンスは解決策の一つとして犯罪行動分析チームを作るべきだと訴え、ついにそれが実現することになった。
以前からヨンスに犯罪行動分析チームに誘われていたハヨン。プロファイラーが何なのかも知らず断っていたハヨンだったが、この機に犯罪行動分析チームに入ることにする。
そんな折・・5歳女児のバラバラ殺人事件が起る。
【韓国ドラマ】悪の心を読む者たち|ドラマ公式サイト
以下ネタバレあります。
まずは「初」というのは自分自身も手探り状態で大変なのに、周りの理解も得られず四面楚歌的な大変さがあります。その「初」の苦労も良くわかるストーリーでした。
最後には信頼も得られて仲間と協力しあえた事は本当に良かったし、目標としていたであろう形になったことも素晴らしかったです。プロファイラーが警察組織の中に確かな立ち位置を獲得するという、その軌跡を描いた物語でもあります。
凄惨な事件をただ追うサスペンスではなく、プロファイラーがもがきながらも仲間にどう溶け合って、犯罪者とどう向き合い戦ったかを描いている点では成長の物語とも言えます。
ただその道は輝かしい物ではなく、冷たい闇の沼に引きずり込まれるようなものでした。
私はドラマだと思っていても、映像が怖いという単純な事ではなく、犯人の話を聞くたび、表情を見るたびに恐怖がどんどん大きくなったし、精神的にも辛かったです。
快楽のための殺人・・本当に怖かったです。しばらく夜道を一人では歩けません。
ハヨンの子供の頃の経験を見ると、やはり何か特別な啓示を受けた人のように思えました。天才肌です。
プロファイラーを目指してからは冷静で思考力も高く鋭利な印象も受けますが、実は慈愛深く人に寄り添う気持ちが豊かであり、また弱さや欠点もある人間味あふれる人でした。
ハヨンがすでに捕まった犯人から話を聞いて彼らの思考や行動を深く理解しようとしたり、事件捜査中には犯人になり切ろうとすることで次第に狂気がしみ込んで行く様子はじわじわと喉を締め付けられるような恐怖でした。
彼自身はもっと怖かったはず。心が病んでいくのも気づいていたでしょうか?ハヨンから表情が無くなっていくのは見ていて辛かったです。これも一つの恐怖でした。
生真面目でとことん追求する気持ちがプロファイラー向きなのかもしれませんが、それがむしろ仇になってしまった感じでした。
キム・ナムギルが確かな演技力でハヨンという人物をしっかりと形作って、その心の中まで見えるような表現が素晴らしかったです。派手な見せ場もないし、声のトーンもほとんど同じ、そんな中でもほんの少しの表情の変化や動きですべてを語るような演技でした。そして本当に泣くシーンが上手いです。
とにかくストーリーの緻密さやリアルさから生み出される恐怖もさることながら、圧巻だったのはやはりキャスト一人一人の演技でした。
ハヨンの上司たちは個性的で楽しかったし、強いて言えばこの人たちのおかげで少し和めたかも。
そして犯人役の俳優陣、素晴らしかったです。一人一人演技力が高くて凄すぎます。熱演、怪演で見ごたえがありました。あんなに真に迫った演技をして、心は大丈夫だっただろうかと心配になるほどでした。
最後まで見て少し疲労感があります。
プロファイラーの実像がわかり、葛藤も苦悩もおそらく涙もあるその仕事に頭が下がりました。犯人を追うという事だけではなく、これ以上被害者を出さない為のプロファイリング。
自分もその世界に入っているような感覚、どうしてそんな風に思うのか不思議でしたが、やはり俳優陣の力が大きく作用していたような気がします。
正直、事件は5件なのですがその内容がどれも強烈で後を引きました。「人間を見る」という事には多少の興味も湧きますが、この仕事は並大抵の精神力では無理だろうなと思いました。
なんだか凄いもの見ちゃった感が大きいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。