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中国ドラマ「鶴唳華亭(かくれいかてい)外伝~別雲間~ 」感想~つがいの鶴に幸せと平穏を願うばかり

「鶴唳華亭<かくれいかてい>外伝~別雲間~」 别云间 2020年 优酷

★★★★★+

前作と比べるとストーリー展開にスピード感もあり迫力も感じ、とても面白かったです。話数も少ないせいかギュギュっと濃厚なドラマになっていました。

この外伝は少し過去に戻って、皇太子・蕭定権(しょう・ていけん)が斉王との争いに勝った後から物語が始まり、前作で語られなかった1年間の出来事が描かれていきます。

そして突然に亡くなった将軍・顧思林の棺を都へ移送するために長州に向かう定権(前作最後)の場面で繋がり、さらなる新しい展開へ向かうのです。

前作で飛んでいた1年の間に実はこんなことがあったのかと驚かされました。とても濃い内容でした。

出だしの部分だけは少しわかりにくく、私は一度では理解が出来ず見直しました。外伝だからと気を抜いていると置いていかれそうでしたが、その後は集中できました。

そしてこの外伝の最後が「鶴唳華亭」という物語の結末になっています。

前作ではロマンス色も強く感じましたが、外伝は運命に翻弄される皇太子・定権がクローズアップされた内容でした。少しずつ行き場を失う定権が哀れでしたし、彼の周りの人への思いが純粋なだけに辛かったです。

外伝に登場する人物はそれほど多くはなく、一人一人が丁寧に描かれているので、その人の思いや考え方も理解できました。

前作~外伝と見れば見るほど皇太子を演じた羅晋(ルオ・ジン)がこの役にドンピシャだったなと思います。彼がこの作品の雰囲気を作り、深みを与えていたように思います。役への理解度が高かったのだと思います。

前作以上に見応えもあり、余韻も長く続く素晴らしい作品でした。 でも見終わって、ものすごく辛かったです。

画像:百度百科

皇太子・蕭定権(しょう・ていけん)=羅晋(ルオ・ジン)
陸文昔(りく・ぶんせき)=李一桐(リー・イートン
許昌(きょ・しょうへい)=王雨(ワン・ユー)
嘉義伯・顧逢恩(こ・ほうおん)=鄭業成(ジェン・イェチョン)
趙王・蕭定楷(しょう・ていかい)=辛鵬(シン・ポン)

東宮の官吏・許昌平(きょ・しょうへい)は実は権力争いの末亡くなった愍(びん)皇太子の息子だった。

許昌平は従弟にあたる蕭定権にも敵対心を持ち失脚させようと謀っていたが、彼の皇太子としての不退転の覚悟を目の当たりにしてその姿に亡父を重ね、定権を支えていこうと決意する。

一方、蕭定権は皇太子妃を迎える。そして想い人の陸文昔も側室とするが病気という理由をつけて外出禁止とした。ひどい仕打ちだと同情を呼ぶが陸文昔は定権から届いた処方箋を見て彼の思惑を察する。そして3年が経ち・・。

国境を守る武徳侯は大きな戦を控えていたが、軍内部には亀裂が生じようとしていた。さらに定権を帝位につかせたいと考えている武徳侯は趙王・蕭定楷(しょう ていかい)の動向が気になり息子の顧逢恩(こ・ほうおん)に注意を促す。

武徳侯は定権の後宮に趙王・定楷の間者がいると気づく。定権に新たな陰謀が待ち受けていた。

鶴唳華亭<かくれいかてい>外伝~別雲間~ | ドラマ | BS11(イレブン)|全番組が無料放送

以下ネタバレあります。

前作は中途半端な終わり方でしたし、あの人は結局どうしちゃったのかなと思ったりもしました。外伝ではスッキリとハッピーに終わらせてほしいと願っていました。でも最終回は出だしから涙が止まらず、苦しかったです。

外伝は話数が少ない割には驚きの内容で、一難去ってまた一難、そしてびっくりの連続でした。

本編の最後でにおわせていた許昌平(きょ・しょうへい)の出自の秘密から始まり、すぐに物語に引き込まれました。

陸文昔(りく・ぶんせき)が側室となって、あぁ良かったとほっとしたのも束の間、思わぬ敵が裏で画策していました。

趙王・蕭定楷(しょう・ていかい)
画像:百度百科

趙王・蕭定楷(しょう ていかい)の変貌ぶりにはちょっとびっくり。でも実は変貌ではないですね。最初は誠実な良い人だと思っていたけれど、考えてみるとあの母親とあの兄を持つ人だし一番の策士でした。ようやくの本領発揮でした。

陸文昔への執着が強く、気持ち的には相当煮詰まっていたのでしょう。斉王よりもずっと陰険な人でした。詐欺師ですね、味方だと思わせておきながら人質をとって・・。

文昔も自分をおめでたい人だったと後悔していましたが、私もすっかり信じていました。

衝撃的だったのは都を離れることになった定楷のために母親が自分の命を絶ったこと。

定楷は冷静でむしろ怖かったです。このことは皇太子・定権にはどう映ったでしょう。斉王の時もそうでしたが、これほどまでの母親の子に対する深い愛を彼は得られなかったわけで・・そう考えると身につまされました。

定権の孤独感は計り知れない。あれほど父親の愛を渇望したのも理解しにくいですが、相当繊細な人なんだなと感じていました。肉親の愛に飢えていたんでしょうね。

定楷の母(皇后)がここで死ぬのもどうなの?と驚きましたが、あのしらじらしい口調を聞かなくてよくなったことは私にはストレス減でした。

そして嘉義伯・顧逢恩(こ・ほうおん)の変貌。本編(前作)では文人で小動物系の可愛い感じだったけれど、武人になって男っぽくなりました。父親のDNAをしっかり受け継いでいたんですね。

嘉義伯・顧逢恩(こ・ほうおん)
画像:百度百科

父親の死がスイッチだったかもしれませんが、顧一族の存続ためにも定権が要だったと思うし、定権を名君にするという使命がずっと根底にあるのでしょう。それが謀反というかたちになってしまいました。

一体どうしちゃったの?と思いましたが、彼としては心変わりでもなんでもないのでしょう。

廃太子となってもなお定権の意思は変わらず、逢恩は彼を説き伏せることが出来ません。最早これまでと思ったのか定権の目の前での自刃。私は逢恩の気持ちも痛いほど理解できたので涙が止まらなかった。

これは定権にはすごくキツイことだったと思います。心が折れちゃったかも。遠く離れれば恋しく思うほどでしたから逢恩は心の支え、ずっと信じていたかったはず。

最後定権は自分が殺されると思っただろうけど、逢恩は自害・・。

静かに時を待っていれば定権が皇太子でいるなら、いつかは皇帝になったんじゃないでしょうか。待てなかったのかな。すでに顧一族は疑われていましたしね。そして、常に陰謀と対峙しなければならない定権を思うと顧一族としても手をこまねいてはいられない状況だったのかも。

そして定権の最後・・。彼の「死」では焦燥感やら哀れみやら寂寥感やら、いろいろな感情がごちゃ混ぜに湧き出てきて涙が止まらなかったです。その感情が胸にぐさぐさ刺さり痛かったです。本当に純真すぎる人でした。

見終わって3日間ほどは彼の「死」を思い出しては苦しく、その後も感情をかなり引きずってしまいました。 

廃太子となった定権は長州の人々の救済のため働き過労で体を悪くします。自分のためにたくさんの人が死に無力感も感じただろうし、絶望の中にいたでしょう。

これもまた「無間地獄(絶え間なく続く極限の苦しみ)」と言えるでしょう。自分を犠牲にしてまでした事ですから、残った人が彼の徳をしっかりと胸に刻んでくれることを祈るばかり。

「無間地獄」という言葉は趙王・蕭定楷の台詞で印象的ですが、前作の序盤でも皇太子・定権が口にする言葉です。登場人物それぞれの人生を思うとだれもがこの「無間地獄」に落ちたように思います。「無間地獄」がこのドラマの一つのテーマだったのだろうと思いました。

一人奮闘していた定権のもとに、陸文昔(りく・ぶんせき)が訪ねてきました。この2人の場面も号泣でした。2人の間に子が出来たことを告げます。定権の幸せそうな笑顔と涙を流す姿には、これでうまくいくかと思ったのですが、その後なんと自害してしまいました。

子を授かるという喜びをもってしても、自分一人が生き残ったことへの罪悪感はぬぐえなかったのでしょうか?自分一人だけ幸せになることが出来なかったのか・・。もっと貪欲に生きることに執着してほしかった。しぶとく生きて欲しかった。

でも文昔は彼の何もかも理解しているようでしたね。今生の別れと言うことも。そこがまた辛く苦しい。

わざわざ鶴の簪をして。ブランコに乗った時に話した通りに。

こんなに強く結びついている二人がどうして一緒にいられないのか、酷すぎます。

最後に父である皇帝が訪ねてきて、初めて父として息子に声をかけ、後悔に涙するのですが、その時はすでに・・。でもきっと魂は聞いていたでしょう。

そして5年後、定権と文昔の息子は皇孫として、元気に育っていました。皇帝は許昌平を皇孫の先生としてつけた様子。そして定権が思い描いていた理想の国を目指そうとしていました。

最後に2羽の鶴が舞う姿を見ると文昔も亡くなっているんでしょうね。

2人が2羽の鶴に生まれ変わり大空を自由に、そして生涯離れずにいると思えば、悲しいけれど少しは心落ち着きました。 

中国には「華亭鶴唳」という四字熟語があり、意味は「かつての繁栄を懐かしみ、落ちぶれてしまった現状を嘆くこと」だそうです。

このドラマの題名では言葉が逆になっているので、見ている最中は今は辛くとも最後はハッピーエンドじゃないかと思っていました。

でも華亭は陸文昔の父親の故郷でした。陸氏の故郷ということかな?

結末はシェークスピアのような悲劇だったけれど、2人の残した息子がこの後の幸せと繁栄につながるのでしょう。

最後まで見て、やっぱり諸悪の根源は皇帝だったように思います。疑いが疑いを呼ぶ世界。愛情がなかったわけではないと思うけれど、全く定権を理解しなかった父親。定権にもう少し図太さがあれば・・あまりにも汚れのない心が哀しかったです。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。

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