「鶴唳華亭(かくれいかてい)~Legend of Love~ 」 鹤唳华亭 2019年 优酷(Youku)
★★★★★+
本格的サスペンスのような出だしで始まり、その後このドラマの世界感にすっかり嵌ってしまい夢中で見ました。映像も美しく、ストーリーは上品で緻密でメリハリもあり楽しめました。感情を抑えた表現やなんとなく感じるゆったり感も好きでした。
ラブストーリーでもあり、復讐劇でもあり、親子のドラマでもあります。愛が深く表現されていて、それぞれの人物の心情も丁寧に描かれているので感情移入も簡単でした。
ストーリーは政治的陰謀や駆け引きでどうしてこうなっちゃうの?と思うような展開が続き、ストレスも感じました。局面がコロコロ変わるので、息もつけないほどの緊迫感もあります。
ずぅ〜っと切ない、悲しい、悔しいの連続で、その感情がグサグサ胸にささって痛いです。その都度色々な思いが頭の中を駆け巡りましたし、何度も涙を流しました。
登場人物は多く複雑に感じますが、主要人物の関係性ははっきりとわかるので混乱はありませんでした。
キャストも良かったです。どの俳優さんも素晴らしかったのですが、主人公二人の印象が強く残る作品でした。
皇太子・蕭定権(しょうていけん)を演じた羅晋(ルオ・ジン)の真に迫った演技が印象に残りました。感情を押し殺した表現では、余計にその思いの激しさを感じましたし見事な演技でした。
ヒロイン李一桐(リー・イートン)は最初は異質な感じもしていたのですが、物語が進むうちに考えが変わっていきました。芯の強さがあってもそれが露骨ではなく、柔らかで少し儚げなヒロインを好演していました。
毎回ハラハラし、次の展開が気になり、たくさんの涙を流し、感情を揺さぶられる、その力は破壊的です。そして最後は余韻の深く残る格調高い作品です。
オープニングの音楽もいつもの中国ドラマとは少し違った印象です。悲しげな旋律と思えば力強く、壮大で美しい。ドラマの世界観を引き立てていてとても良かったです。
皇太子・蕭定権(しょう・ていけん)=羅晋(ルオ・ジン)
陸文昔(りく・ぶんせき)=李一桐(リー・イートン)
斉王・蕭定棠(しょう・ていとう)=金瀚(ジン・ハン)
皇帝・蕭睿鑑(しょう・えいかん)=黄志忠(ホァン・チーチョン)
皇太子・蕭定権(しょう・ていけん)は、幼い頃に皇后である母を亡くし、皇帝である父からの愛を感じることなく育った。信じられる者もわずかで常に孤独と戦っている。
そして皇太子の座を密かに狙う側室の子である斉王・蕭定棠(しょう・ていとう)とは事あるごとに対立していた。
先延ばしにされていた蕭定権の皇太子冠礼の儀がいよいよ執り行われることとなったが、その式の最中に事件が起こる。女官が城壁から落ちて亡くなり、冠礼の儀は中止となってしまった。
亡くなった女官は皇太子が心を許せる数少ない者の一人だった。皇太子はこの事件の証人と証拠を示して斉王の悪企みだと暴くが、最後の最後で譲歩する。
この事件の決着として皇帝は次の科挙試験終了後斉王を都から出すと約束するが、その科挙試験ではさらなる陰謀が待ち受けていた。
斉王の策略に嵌ってしまった皇太子は窮地に立たされるが、この一件で陸文昔(りく・ぶんせき)と出会うことになる。
そしてお互いに惹かれ合った二人には悲愴な運命が待ち受けていた・・。
鶴唳華亭<かくれいかてい>~Legend of Love~ | ドラマ | BS11(イレブン)|全番組が無料放送
以下ネタバレあります。
架空設定の歴史劇です。衣装などを見ると「北宋」のようにも思えます。
物語は始めからそれぞれの思惑が絡み合って複雑です。そして台詞だけでははっきりとわからない事も多く、言葉や行いが暗号のようでもあり、禅問答を見ているようでした。そのため、一度では理解が追いつかない部分もあり、録画していて良かったと思いました。
謎かけされているような奥の深い内容です。見ている私が試されているような感覚も時々・・。
皇太子・蕭定権(しょうていけん)は皇太子でありながら力は無いようでした。ちょっと頼りないと思うこともありますが、20代そこそこという年齢なので、そういうことも念頭に入れて見ると理解しやすいかと思います。泣き虫です。(笑)
皇太子は父である皇帝からは愛情を感じることなく成長し、君臣の関係を頑なに保っています。それが意地を張っているというか、ひねくれているというか子供っぽくも見えました。
実は父親の愛を渇望していて側室の子である兄・斉王を羨ましく思っている。その気持がいたるところに表れるので、見ていてとても辛かったです。
皇太子に対する皇帝の接し方も大人げないと思いました。皇帝は皇太子が自分よりも恩師や伯父に懐いていたことが原因でいつしか隔たりを作ってしまったようでした。
皇太子にはなぜかいつも逆風が吹いていて、朝廷でもアウェイ感がスゴイです。あんな状態なら本人からすれば皇太子でなくていいと思うでしょう。
でも皇太子も清廉潔白というわけではなく、色々と策を講じて敵をやり込めようとします。それがリアルな人間らしさを感じさせ面白かったです。
それにしても皇帝がなぜあそこまで斉王を可愛がり甘やかしているのか理解出来ませんでした。母親が寵妃だったからでしょうか?皇太子の実母の一族に敵対心があったから?
ようやく最後の最後で父親と息子の確執は溶けたように見えましたが、それまでが長すぎました。息子は大人になれば自分を脅かす存在にもなり得る、敵になるという皇帝の考えにはハッとしましたがやりきれませんでした。でも、あの時代にはこの考えも不思議ではないのでしょう。
一方、陸文昔(りく・ぶんせき)にも茨の道が続きます。皇太子を思いずっと待ちながらも、別の人を妃に迎えた皇太子のそばに仕えて守り支え続けます。
彼女には17歳の時に出会い心を通わせた人が皇太子だと始めからわかっていましたが、皇太子は文昔の顔を見ていないので近くにいながら彼女と気づかないのです。そこからもう底なし沼のような悲劇の始まりです。
そばで仕える彼女の気持ちを思うと本当に残酷なストーリーです。でも彼女には父と兄の復讐という目的もあったから出来たことかもしれません。
もう辛いことだらけ、皇太子に邪険にされるのももちろんですが、あらぬ疑いをかけられ罰を受けたり、兄が入っていた同じ牢に入れられた時は兄の作ったわら細工を見つけて・・。これでもかと言うほど悲惨な運命で何度も泣かされました。
クライマックスに入ってようやく皇太子が彼女こそがあのときの娘だと気づき、ずっと待っていた想い人だと叫ぶ、その声を背中で受け止め罪人として連行されるシーンでは号泣。自分でも皇太子の気持ちになっているのか、陸文昔の気持ちになっているのか分からなかった・・。とにかく号泣しました。
もう何もかもすんなりとはうまくいかない。でもだからこそ、このドラマから抜け出せなくなるのです。
登場人物は悪者も含めて皆魅力的でした。嫌な奴もとことん嫌な奴かというとそうでもなかったりして、あれこれ語りたくなるような人物が多かったです。
斉王とその母親は本当に最後の最後まで憎たらしかった!あの母親は皇后のままだったのかしら?ふたりとも自業自得だしいい気味だった。最後はほんのちょっと胸のすく思いでしたが、私としては少々物足りない結果でした。
主人公以外で特に好印象だったのは皇太子妃です。この人は本当に仙女のような良い人で救われました。
この時代の貴族の誰もが背負っている「一族」の意味、その繋がりは単なる血のつながりではなく未来を見据えて自分の生き方まで左右するやっかいな塊のように感じました。
だからこそ欲に走って罪を犯す人もいるし、不自由を感じる人もいてやはり大変な世の中だったなと考えさせられました。
最後は定権が別れに見せる笑顔が悲しく、また泣きながら見終わったのですが、エンドロールの後にまだ続きがあり・・。危うく見ずに終わりにするところでした。
なんだかまだ秘密が隠されているようです。
「外伝」も楽しみです。ハッピーエンドになるんだろうか?・・
最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。