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中国ドラマ「陳情令」感想~ファンタジーの世界で繰り広げられる人間ドラマ

「陳情令」 陳情令 2019年 腾讯视频

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多くの方が感想をあげていらっしゃる中、今更私などがどうかと思いますが、ようやく視聴が叶い見終わりましたので書かせていただきます。(長いです)

今なお人気の高いドラマであり、主演の肖戦 (シャオ・ジャン)と王一博 (ワン・イ  ーボー)を一躍トップスターに押し上げ、社会現象にもなった作品です。好き嫌いは関係なく見なければいけないドラマだと思っていました。

でも見始めて暗礁に・・。

まずその世界観が私には難しい、そして名前が難しかったです。とにかく登場人物が多く、更にその名前、呼び名が複数あるので戸惑ってしまい、慣れるまでは本当に難しく感じました。

出だしは面白いと感じたのですが、中盤は少し退屈。終盤に入って対峙する敵がはっきりして、ようやく加速度がついたように展開が理解できるようになって興味が持てました。

残念ながら、私は最初から最後まで訳が分からず見ていたので、ストーリーを楽しむというところまでには至りませんでした。(私の想像力、理解力不足が原因かと)

そんな中でも主人公は華やかで美しいですし、衣装や髪が風になびく様子などの細かい部分の美しさが印象に残っています。

原作はBL小説ですがドラマではBL感はありません。

登場人物については一人一人がとても丁寧に描かれていて、人間が持つ様々な感情が人物を通して表現されていました。それぞれの人物の関係性も複雑で、だからこそ切なくもあり、悲しくもあり感情を揺さぶられました。

一度では理解は及ばなかったけれど、何度もみて噛み締めれば噛み締めるほど深く心に刺さるドラマのような気がしています。師弟愛や家族愛、そして絆を描いたヒューマンドラマでもありました。

私はこのファンタジーの世界感にいまひとつ入り込めなかったので★4にしようと思いましたが、見終わっても長く心にとどまりもう一度じっくりと見たいと思わせてくれたドラマだったので★5にしました。

画像:百度

魏無羨(ウェイ・ウーシェン)/魏嬰/夷陵老祖=肖戦 (シャオ・ジャン)
藍忘機(ラン・ワンジー)/藍湛/含光君=王一博 (ワン・イーボー)
江澄(ジャン・チョン)=汪卓成(ワン・ジュオチョン)
温寧(ウェン・ニン)=于斌 (ユー・ビン)
金光瑶(ジン・グアンヤオ)= 朱賛錦 (チュウ・ザンジン)

魏無羨(ウェイ・ウーシエン)の作った陰虎符(死者を思い通りに操ることができる法具)を我が物にしようと奪い合い、殺し合いを続ける人々。

魏無羨は道を外れた邪悪と罵られ、また目の前で繰り広げられる殺し合いに絶望し崖から身を投げる。

藍忘機(ラン・ワンジー)は手を伸ばし必死に引き上げようとするが、恨みを持つ同門の江澄(ジャン・チョン)がこれを阻み魏無羨は谷底深く落ちていった。

その16年後、魏無羨は舎身呪(わが身を犠牲にして誰かを蘇らせる術)を使った莫玄羽の体に蘇る。

その頃、莫家ではたくさんの死人が出て藍氏の仙師達がお祓いにやって来ていた。彼らを見た魏無羨は藍忘機を思い出す。

莫家の息子はお祓いに使う召陰旗を盗んだことで悪霊に取りつかれ、さらにその父母まで悪霊の傀儡となって暴れまわる事態に。そこに藍忘機が現れてこれを鎮める。その時彼はあることに気がつき、もしや魏無羨が生きているのではと心をざわつかせた。

魏無羨の腕には4つの傷が出来ていた。これは莫玄羽の4つの恨みを示していた。そして今、莫家から蔑まれ虐げられていた莫玄羽の恨みが晴れるとキズの3つは消えていった。

残る一つの仇を探すため魏無羨は莫家を後にする。

ある日魏無羨は藍忘機と再会すると、もう一度16年前のあの頃に戻りたいと過去を懐かしむ。

藍家の座学で知り合った全く性格の違う二人は、いつしか心を通わせるようになり、そして同じ志を持って共に難敵に立ち向かっていく。

「陳情令」ドラマ公式サイト

以下ネタバレあります。

中国ではこのようなファンタジー色の濃い「仙侠」ものは人気のジャンルのようで、作品も多いです。神、仙、妖、魔、人、鬼の間の争いなどが描かれますが、この世界観に上手く浸れるかどうかがポイントでもあると思います。

私はファンタジーが苦手で、この手の作品にはいつも苦労します。でも「陳情令」はイケメン揃いで、見る意欲は衰えませんでした。(笑)

序盤で魏無羨が蘇ると過去に彼と繋がりのあった人々がどんどん登場します。関係性がわからないまま、ただ情報だけが増えていくので初めは大変でした。3話ぐらいからようやく飲み込めるようになりました。

やはり始めのうちは相関図などがあると助かると思います。

最後まで見終わって振り返ってみると、登場人物を通して人間の持つ様々な感情が描かれていました。業や欲、執着、妬み、恨み、憎悪、嫉妬、尊敬、恩義、愛などあらゆる感情が見えて、そういう意味でも奥が深いスケールの大きいドラマでした。

画像:daoyutech.com

魏無羨(ウェイ・ウーシェン):魏嬰(ウェイ・イン)

自由奔放で子供っぽいところもあり、少しいい加減にも見えますが裏表なく真っすぐな性格です。その真っすぐさが周りの人には眩しく疎ましいのかもしれません。

またどんな状況にあってもこうだと思ったら突き進む人。そして目的の為なら合理的に考えて柔軟に対応する人です。この合理的な考えや柔軟性も周りの人にとっては受け入れ難いもののようでした。

私欲がなく慈愛に満ちた人でもあり、賢く実力もある、でもそれが敵を作る元になってしまいます。

とんでもなく過酷な人生を歩むことになってしまったので、何でこんなことにと同情もしましたし、最後は悲劇にならないようにと思いながら見ていました。

周りからの妬みや嫉妬、誤解から生まれた悪のレッテル・・重い荷物を背負っていた魏嬰(ウェイ・イン)ですが、演じた肖戦 (シャオ・ジャン)が重苦しくなくさらりと爽やかに演じていました。この役に合っていたし素晴らしかったです。

画像:daoyutech.com

藍忘機(ラン・ワンジー):藍湛(ラン・ジャン):含光君

厳格で少しの間違いも許さぬ人なので親しみやすさはないですが、多くの尊敬や憧れを集める人でもあります。順風満帆かと思えば、優等生にならざるを得なかった立場や人を寄せ付けようとしない彼の孤独を思うと切なくなりました。

常にポーカーフェイスで台詞がほとんどないです。でも台詞が少ないにも関わらず、ものすごい存在感でした。彼が長く登場しないとぽっかりと穴が開いたようで、落ち着かなかったです。

台詞がない分、ほんの少しの微妙な動きに様々な感情や思いが現れていて、見た目はクールですが、心は熱い人だとわかりました。

私は藍湛には色気も感じましたし、このキャラにはかなり惹かれました。ほんの少しでも顔がほころぶとドキッとしてました。

このキャラのおかげで、思いがけずクスっと笑えるところもあるんですよね。

でもつまりは、王一博 (ワン・イーボー)がこのミステリアスなキャラを実にうまく演じていたという事です。彼もこの役にピッタリで素晴らしかったと思います。この人しかいないと思わせてくれました。

画像:百度

魏嬰(ウェイ・イン)と藍湛(ラン・ジャン)の絆、ブロマンスが物語の要でもあります。

二人がどうやって絆を深め、お互いが唯一無二の存在になっていったのかは、過去の物語として丁寧に語られています。

知り合った頃、魏嬰は無邪気にお構いなしにどんどん藍湛に接近して行きます。藍湛にとっては煩わしく、かき回されているような感じですね。

異質な者同士のよくあるパターン、でも実はあっという間にお互いがお互いの心に入り込んでいたのかなと思います。後になってそんな風に感じました。

そして藍湛の魏嬰に対する気持ちはとても真っすぐで、私が思っている以上に熱かった。藍湛は魏嬰があまりにも心配で「連れ帰って隠してしまいたい」と思うほど。(25話だったか?)

表情を崩さず発せられるこの言葉はインパクト抜群でした。藍湛がこの言葉を口に出したという事はよっぽど切羽詰まっていたんだろうと思いました。ほとばしるような思いが感じられました。もう愛でしょ。

その後、藍湛は最悪の事態を回避できず不夜天で魏嬰を失ってしまいました。

藍湛はとにかく魏嬰をなんとか救いたい一心で、それまで何度も禍の渦から引き戻そう、眼を覚まさせようと頑張っていました。

でも結局は救えなかった。彼を信じてどんな道でも共に手を携え歩むべきだったと後悔したと思います。彼を信じ切れていたのか?自分が守っていたものは何だったのか?と自問しながら・・。

そして藍湛にとって魏嬰を失ってからの16年間は長く辛い日々、失意のどん底・・16年間は途方もなく長い。

だからこそ再会した後は何があっても彼を信じ、共に歩み、自らをも変えていきました。二度と離れない・・その愛の強さが感じられて感動しました。

こんな風に愛の強さ、深さという点ではどうしても藍湛に軍配を上げてしまいます。物語は訳が分からないと言いながら、私は藍湛にかなり傾倒していたんだと思います。

時々、魏嬰にはあなたは真剣なの?と問いたかった。(笑)

画像:daoyutech.com

クライマックスは迫力もあり高揚感を感じました。江澄や金光瑶の胸の内も明かされてスッキリ。

その後は切ないシーンもあったのですが、たくさんの感動もあり後味は良かったです。

最後に二人の再々会のシーンではゾクっと震えちゃいました。魏嬰の笑顔のこのほんの数秒間を堪能するためにこれまでの長い道のりがあったように思いました。すべて報われる思いでした。

私はここで終わり(完)でも良かったのにと思いました。

確かにあやふやな点は回収されてスッキリだったのですが、せっかくの余韻がブツンと切断されたようで残念でした。

それでも、結局はとても面白かったという感想です。奥の深いドラマでもあり、なにより麗しいドラマでもあります。

吹き替え版のほうが理解しやすいという方もいらっしゃるようなので、機会があれば吹き替え版も見てみたいです。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。