「悪の花」 악의 꽃 2020年 tvN
★★★★★
ストーリーが凝っていて、スピード感のあるスリリングな展開で最後まで面白く見ました。俳優陣もベテランから若手まで演技派揃いで見ごたえのある重厚で深い作品でした。
現在の事件が過去の事件と繋がり真実が見えてくる・・次から次へと危機が迫り緊迫感MAXのサスペンスですが、愛や葛藤、希望や絶望など人の心を描いた人間ドラマでもあります。
「ファン・ジニ」「空港へ行く道」「マザー」など心を描く作品を多く演出しているキム・チョルギュ監督作品ということでも興味がありました。感情を映像で素晴らしく表現してくれる監督です。
そしてこの作品は脚本が素晴らしいです。穴がない緻密なストーリーで終始ハラハラが止まらない、サスペンスとして完成度の高い作品です。そして矛盾や疑問の残らない結末、さらに余韻の残るエンディング・・脱帽です。
主演のイ・ジュンギが役にピッタリでこの人でなければと思わせてくれました。残酷で複雑な運命を背負った主人公を見事に演じていました。
監督、脚本、俳優と三拍子揃ったとにかく面白い素晴らしい作品です。久々に夢中になって見た韓ドラでした。
音楽もこのドラマの世界観にピッタリで場面を大いに盛り上げてくれました。
画像:mk.co.kr
ト・ヒョンス/ペク・ヒソン(イ・ジュンギ)=金属工芸家
チャ・ジウォン(ムン・チェウォン)=刑事
ト・ヘス(チャン・ヒジン)=ヒョンスの姉
キム・ムジン(ソ・ヒョヌ)=ヒョンスの同級生、週刊誌の記者
刑事のジウォンは金属工芸家の優しい夫ペク・ヒソンと娘ウナと幸せに暮らしている。悩みは仕事の忙しさと夫の両親になぜか嫌われている事だ。
週刊誌の記者をしてるキム・ムジンは故郷で起こった18年前の無差別殺人事件の犯人とその息子ト・ヒョンスについての記事を書いた。その犯人が金属工芸家だったことから興味本位でジウォンの夫の工房を訪ねる。しかしそこにいたのは思いもよらない人物で・・。
一方、中華料理店の店主が殺される事件が発生し、被害者と一時期共に働いていたト・ヒョンスが容疑者となる。ヒョンスの過去はすっかり消されていて顔さえわからないという状況の中、捜査を進めるジウォンは愛する夫が次第にト・ヒョンスと重なり混乱する。
以下ネタバレあります。
キャストがとても良かったです。ベテラン俳優だけでなくイ・ジュンギ、ムン・チェウォンの他、出演した全ての俳優の演技力の高さに拍手です。
物語は畳み込むような展開で飽きさせず、終始ハラハラでどうなっちゃうの?と目が離せませんでした。その上単なるサスペンスだけにとどまらず愛や感情を深く問うドラマでした。
画像:tvN
ト・ヒョンスは連続殺人鬼の息子というレッテルに加え、自分も殺人犯として指名手配中であるという状況から逃げるため、偶然利害関係で一致したある夫婦の偽の息子として生きてきました。
そんな嘘の中で自分を愛してくれるジウォンと結婚し、今を平穏に生きています。この生活をどんな事をしても守りたいと思うのは当然でしょう。自分の真の姿が明らかになればまたあの地獄へ逆戻りです。
このドラマで一番のポイントはヒョンスが感情を持っていないということです。今の人生を演じるためにこっそりと笑顔を一人で練習する姿や、本当の自分を隠し通そうとする切実さを思うと胸が締め付けられました。
「愛したことはない」と言う彼ですが、かけがえのない家族を持った彼の中に「愛(愛情)」は存在していたはずです。それが何なのか認知できない、言葉で表現出来ないというだけでしょう。
もしかしたらあの父親との生活で感情を捨ててしまったのかなとも思いましたが、あんな悲惨な境遇の中で成長して純粋さを保てていたのは奇跡です。
画像:tvN
一方妻のジウォンはずっと愛し合っていると信じている夫に秘密があると気づき、真実を知りたいという気持ちから逃れられなくなります。真実を知った時の衝撃を予想したでしょうか?刑事だからこそどんどん真実に近づいてしまいます。彼女が刑事という設定もポイントです。
捜査している事件の犯人が自分の夫なら・・愛して共に暮らしている人が信じられない恐怖。深く疑いながらもそれでも愛しているという複雑さ。
私はこのジウォンの葛藤の演技表現はもう少し・・とも思いましたが、真実を追い続ける姿には強い覚悟を見ました。愛しているからこその覚悟だと思います。
ジウォンを演じたムン・チェウォンさんがとても美しかった。特に髪型が懐かしい・・昭和のレイヤーカットでファラフォーセットを思い出しました。(わかる方いるかしら?)
ヒョンスの姉のヘスと記者のキム・ムジンの関係性も好きでした。ムジンは始めは信用できなかったけれど予想外に良い奴だった。視聴者としては緊張の展開の後、彼がいたからちょっと気を抜くことが出来たし良いキャラでした。演じたソ・ヒョヌさんが上手なんですよね、最後は可愛く見えましたから。
そして本物ペク・ヒソンを演じたキム・ジフンさんの演技はゾクゾクするほど真に迫っていて圧巻でした。
このドラマで一番感心したのは事件の決着が付いた後の展開です。
まず全てを納得いくように解決している点。姉の問題も、ヒョンスの問題も法的に解決しました。ヒョンスはヒョンスに戻り、そして悪者は裁きを受ける。あれはどうなったの?なんて思う問題を残さないところは流石です。
そしてもう一つは、「愛」をこの上なく心に響くように描いている所。最後ヒョンスはヒソンとして生きていた間の記憶を失ってしまいます。これは一見必要ないと思える展開ですが、ドラマチックというだけでなくここからの「愛」の描写が極上です。
ジウォンを刑事さんと呼ぶヒョンスは彼女を見ると心が落ち着かなくなるし、ジウォンはヒョンスにヒソンを探す・・。何よりも記憶より感情が先行しているヒョンスに心を揺さぶられました。涙なくしては見られません。号泣・・。
最終話は本当に私好みの展開で余韻の残る素晴らしい作品でした。
至福の時を感謝します。
【Mnetオフィシャルインタビュー】 「悪の花(原題)」イ・ジュンギのインタビュー!<前編>
【Mnetオフィシャルインタビュー】 「悪の花(原題)」イ・ジュンギのインタビュー!<後編>
最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。