12月は全て図書館本です。オーディブルの時よりもたくさん読んでいるという不思議。自分でも予想外でした。【116~125】
ネタバレあります。
116.破船 吉村昭
海に面した貧しい村では「お船様」を待ちわびている。村人に恵みをもたらす「お船様」とは・・。
すごく暗い話、悲劇です。貧困との戦い、生きていくための戦いではありますが、考えれば考えるほどいたたまれない内容でした。ただ途中で止めようと思う事はなく、読ませる力は流石だなと思いました。
かなり昔の作品ですが、読みにくさはありませんでした。丁寧な描写なので臨場感もあり、この世界に引きずり込まれ苦しかったです。
117.月の立つ林で 青山美智子
静かに流れるような優しい物語でした。悩める登場人物がポッドキャストの番組に癒され前に歩き出す・・。
月に対する豆知識も楽しかったですし、ひとつひとつのエピソードは面白かったです。最後は涙でした。でもただ読み終わってあまり心に残らなかったかな。
118.蜂蜜と遠雷 恩田陸
序盤からどうなるんだろうというワクワク感が半端なく、ページをめくるのももどかしい感じでした。ピアノコンクールを舞台に描いた物語、本当に最初から最後まで面白かったです。
更にこんな風に音楽を鑑賞するのか、楽しむのかと目からうろこでした。音楽のプロならではの楽しみ方なのかなとも思いましたが、想像力で楽しさは倍増するんだと改めて教えられました。
若々しい息吹も感じるし、登場人物同士の化学反応も楽しいし、才能や運命やそれを自分の物にする努力やすべてがキラキラ輝いていて素晴らしかったです。傑作です。
個人的には高島明石が好きだったな。
119.僕が夫に出会うまで 七崎良輔
2015年に初の「同性結婚式」を挙げた本人(ゲイ)による赤裸々な自伝。
まず、こんなに小さい時から複雑な思いを抱えて気持ちを閉じ込めて生きてきたという事に衝撃を受けました。それにもかかわらず、ものすごく純粋な人です。そのことも驚きました。
サラッと明るい文体で卑屈になったり暗い語りではないので読みやすく、人の温かさが伝わる内容でした。
幸運なことにこの人の周りには良い友達がいたなぁと思います。何度も泣きながら読みました。
まだ彼の気持ちの半分もわかってないかもしれないけれど、読んで良かった。全ての人が自分を解放出来て、誰もが仲良く手を携えて生きていける社会になればいいなと思います。
「身近にそんな人はいないというのは間違い」という言葉が刺さりました。
120.ヨンケイ!! 矢沢夏月
離島の陸上部に奇跡的に集まった選手達で100×4(四継)に挑むスポーツ小説。
4人はギクシャクしていてリレーチームとしては最悪。そんな選手一人一人の葛藤や挫折、不安などを丁寧に描いて、いつしか一つのゆるぎないチームになるまでの青春物語。リレーなのでただ早く走れるだけではダメなんですね。
サクッと読めましたが、それぞれの選手の絡みがあまり濃厚に描かれていないので、感動も薄めでした。

121.そして、バトンは渡された 瀬尾まいこ
親の離婚などで何度も苗字が変る主人公。現実味が無いようにも感じましたが、家族の形は様々。
普通とか一般的とか良く使ってしまう言葉ですが、そういう枠自体について考えさせられました。不幸も幸せも自分が感じる事、それぞれです。
この主人公も良い人達に囲まれてラッキーだったなと思いました。でも最後は梨花のした事は違うんじゃないかなと思いました。彼女の気持ちは理解できても、許せない気がします。結局は大人に振り回されたという思いが残りました。
122.私を離さないで カズオ・イシグロ
出だしは施設の話と思っていましたが、段々その施設の秘密が見えてきてミステリーのような面白さがありました。
提供者という言葉に嫌な予感がしました。
その秘密を知れば恐ろしいし、辛いし、とても重い内容でした。ただ淡々と語られ静かな世界感です。でもそれが余計にジワジワと迫る恐ろしさを増幅していたと思います。
絶望を感じる内容ですが、不思議と読後感は悪くありませんでした。
123.あめつちのうた 朝倉宏景
コンプレックス、家族とのわだかまり、アスリートそしての葛藤、LGBTなど盛りだくさんの内容です。
球場整備の仕事に就いた青年の話ですが、テレビで見る球場の整備、実は何をしているのか全く知らなかったので、勉強にもなったしすごく奥深い仕事だなと思いました。
高校野球を見るときなど違う気持ちで見られるような気がします。そういう面もあって、とても面白かったです。
124.何者 朝井リョウ
就活を戦う若者たちの心理や葛藤を描いています。
若い人のやり取りを読むと、これが本当にふつうのやり取りだと思うのですが、なんだか少し疲れました。
たとえ友達であれ、始終あんなに気にしていたらさぞかし心が疲れるでしょう。SNSの弊害を考えさせられました。
登場人物のキャラが際立っていました。人間を丁寧に観察しそれを的確に文章にする力は流石です。
125.羊は安らかに草を食み 宇佐美まこと
認知症になった益恵を友人二人が旅に連れ出し益恵の過去をたどります。
益恵は戦時中のまだ10歳たらずの子供の時に家族で満州から逃げ出すも孤児となり、その後も生きるために壮絶な毎日を過ごします。そして命からがら祖国の地を踏みますが・・。
戦争で日本が負けた後、中国での生き延びるため、日本へ帰るための凄惨な戦いが描かれていて、真に迫る描写があまりにも悲惨で辛くて言葉も出ませんでした。
ほとんどが戦争がらみの辛い内容ですが、益恵がずっと隠していた秘密があり、その真実へ向かうクライマックスはスピード感もあって面白かったです。
また同行した友人二人それぞれが抱える問題も描かれていて、笑える内容ではないですがそれがクッションになり、現実に引き戻されホッと出来ました。
すごく重い歴史をたどる内容ですが、最後はスカッとして後味は悪くないです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。