「尚食(しょうしょく)~美味なる恋は紫禁城で~」 尚食 2022年 芒果TV
★★★☆☆
紫禁城を舞台にした女官の恋、友情、成功、挫折そして食を描いた宮廷史劇です。
尚食局で修行を積む女官の成長と恋を通して明の時代を描いた作品でした。登場するお料理は食材から作り方まで興味深かったです。手が込んでいて色鮮やかで目を見張りました。
副題からラブストーリーと思って見始めましたがロマンス色はあまり濃くなく、胸キュンも、ドキドキも思っていたほどはなく、ロマンチックなシーンがあまりありませんでした。
それなら政治的な攻防が焦点なのかというとそうでもなく・・ストーリーも盛り上がりを見せるのは最後だけで、どちらかというと淡々と進んでいきます。そのため途中は少し惰性で見ていました。
ただ、出てくる調度品や衣装、その場の雰囲気の作り方はとてもキレイで洗練されていました。キャストも魅力的で上品なドラマに仕上がっていて、最後まで見せる力は流石だなと思いました。
私としては許凱(シュー・カイ)、吳謹言(ウー・ジンイエン)、王一哲(ワン・イージョー)の共演で期待値も高かっただけに、3人の絡みや盛り上がりも今一つで少しがっかり。
そのほかのキャストも魅力的な人が多かっただけに、少し残念な気持ちが残りました。登場人物などはもう少し掘り下げて欲しかったし、ストーリーに抑揚や深さも欲しかったです。
朱瞻基(しゅ・せんき)=許凱(シュー・カイ)
姚子衿(よう・しきん)=吳謹言(ウー・ジンイエン)
游一帆(ゆう・いつはん)=王一哲(ワン・イージョー)
明代・永楽20年、永楽帝(第3皇帝)は北のアルクタイを破り凱旋する。外出していた皇太孫の朱瞻基(しゅ・せんき)にもその知らせが届くが、途中悪路に阻まれ帰ることが出来ないでいた。
その頃宮中では尚食局(食事の調理や毒味をする)が新しい掌膳(しょうぜん)を選ぶ試験を行っていた。
料理の腕前が評価され、姚子衿(よう・しきん)を含む3人が候補となった。しかし「食の道」を問われ、結果3人とも追放されることに。
そこへ永楽帝凱旋の宴を催すとの知らせが尚食局に入ると、人手が足りないと皆駆り出されることになった。姚子衿も皿洗いにまわされる。
宮中での宴席では永楽帝の前に次々に豪華な料理が運ばれる。しかし何一つ手を付けようとせず、料理を担当する者も困り果てていた。
手伝いをしていた姚子衿(よう・しきん)はあっさりとして消化に良い物、そして薬膳料理などを提案し、永楽帝も喜んでこれを食べた。
永楽帝の体調を気遣い作った料理は孟尚食には褒められたが、王司膳に難癖をつけられて姚子衿は提鈴の罰(重い鈴を腕にぶら下げて歩く罰)を受ける。
ある夜、鈴をぶら下げ歩いていた姚子衿は皇太孫の輿を見るとその前で倒れこみ・・皇太孫に罪を免じられる。
司膳(調理)部での講義にも出られず雑用ばかりの姚子衿だったが、ある日先輩から料理を届けて欲しいと頼まれた。そこは静けさを好む皇太孫が建てた書斎だった。
姚子衿は罰を免じてもらったお礼に一品を加えて届ける。この料理を気に入った皇太孫は今後は直接届けるようにと命じる。
※尚食局のトップの女官は「尚食」と呼ばれ、尚食局は司膳、司酝、司药、司禧の4部署に分かれていた。
以下ネタバレあります。
後宮には6つの局があり、仕事を分担していました。
尚食局のトップは「尚食」と呼ばれ、局内をまとめていました。尚食局内では更に部に分かれ仕事を分担していました。調理を担当する「司膳」、飲み物を担当する「司酝」、薬担当の「司药」、食材や日用品を管理する「司禧」があり、それぞれの下に典〇、掌〇、下働きが配置されていました。(司膳の部下は典膳、掌膳となります)
最初はこの上下関係がよくわからず、苦労しました。見終わった私としては、この役職名(位)についてはそれほど気にせず見進めて大丈夫だと思いました。
下働きから少しずつ上を目指す女官たちの大変さもうかがい知れるストーリーでした。序列を知ると「尚食」など夢のまた夢のような気がします。
トップになるには料理の腕だけでなく、人望や後宮の信頼も必要だったでしょう。口に入るものを担当するわけですから、ただ美味な料理というだけでなく、健康管理も含め責任も重大だったと思われます。
相手の健康状態に合わせて料理を決める様子もしばしば見られました。
このドラマのヒロイン・姚子衿(よう・しきん)は料理の腕前だけでなく食材や漢方の知識も豊富で、尚食になることを目指していました。その実力からして尚食に適任の人だったように思います。
この子衿が皇太孫・朱瞻基(しゅ・せんき)に料理を届けたことをきっかけに、二人の恋物語が始まります。
子衿は清廉な人のように見えましたが、あざとい面もあって驚きました。そして皇太孫・朱瞻基相手にもかなり強気です。
で、お互いに気持ちはありながらもこの二人の恋はなかなかうまくいかず、じれったいというより途中飽きてきてしまいました。
朱瞻基はアプローチに対しても、子衿は駆け引きではないと思いますが、自分を曲げず可愛くないのです。なので子衿に対してはあまり良い印象は持てず応援する気にもなれなかった。
料理を極めて尚食を目指していたし、朱瞻基には割と冷たい態度でありながら、いざとなれば妃になるし、この人の心の内は良く理解できませんでした。もちろん感情移入など出来ず終わってしまいました。
自分の人生なのに自由に出来ないもどかしさや怒りみたいなものを持っていたようです。でもこの時代なら・・と思ってしまいました。
一方の朱瞻基・・私は「大明皇妃」で朱瞻基を演じた朱亜文(ジュー・ヤーウェン)の印象がまだ強く残っていたので、申し訳ないけれど許凱(シュー・カイ)が子供っぽく見えてどうなんだろうと思っていました。
でもしばらくするとお似合いの二人ですから、そんな気持ちも薄くなりました。
「大明皇妃」の時もこの朱瞻基という人はおちゃめでキュートな人だと感じましたが、今回もそんな一面が見られました。実際にこういう人だったのかしら?
ただ、せっかく許凱(シュー・カイ)が演じていたのに、印象が薄くあまり見せ場もなかったようで物足りなさが残りました。戦う姿はカッコよかったですけど。
ストーリーはクライマックスに入って漢王の謀反に立ち向かうことになり、ようやく勢いがついたような感じ、加速度がついて面白くなりました。
漢王派の人間が奥深く入り込んでいることに驚き、裏をかかれる展開で目が離せなかったです。ここに来るまでが長かった~。
前半は尚食局のあれこれを描いていますが、それが中心でないならここはもう少しコンパクトにまとめても良かったと思います。見終わってみれば尚食局、料理を懇切丁寧に描く意味があったのかと思ってしまいました。
実は私は王一哲(ワン・イージョー)目当てで見始めました。彼が演じた游一帆(ゆう・いつはん)は漢王の庶子でかなり屈折した複雑な人です。
大それた企みがあった人でしたから、もう少し掘り下げてどろどろした感情を早い段階から描いて欲しかった。そしてもっと活躍どころも作って欲しかったというのが本音です。
そして、朱瞻基の側に仕える陳蕪(演:朱致靈)が美男でした。淡々と任務を遂行する人で、こすっからい所もまったくなく信頼できる人でした。目立たないようで、すごく目立ってました。
そして王雨が趙王役で出演していましたが、出番があまりなく見せ場もなかったのでくもったいないと思いました。
突っ込みどころも多々あり、見終わって盛り上がったのは最後だけで、もう少し何とかならなかったのかと不満も残りました。特にキャストは皆素晴らしかったので尚更です。
最後は殷紫萍、胡善祥は宮中を出て自分の道を究めることを選び、孟紫澐と蘇月華は自分の身の置き所を見定めて自らその後を選びました。
そして、姚子衿は自分の能力をすべて朱瞻基と国のために捧げる覚悟を決めてめでたしです。
結局はそれぞれの女性の生き方を描いた作品だったかなという感想です。
最後まで読んでくださってありがとうございます。