「覆流年(ふくりゅうねん) 復讐の王妃と絶えざる愛」 覆流年 2022年 芒果TV
★★★★☆
序盤はかなりのスピードで展開し、このエピローグとも言うべきエピソードが衝撃的でこの後どうなっちゃうの?という驚きが大きかったです。その思いがけない展開にグイグイ引き込まれました。
何もかも奪われた悲劇の王妃が思いがけず人生をリピートするチャンスを得て、仇敵に復讐する。大願成就となるのか・・それが見どころの一つです。
心理戦や頭脳戦の応酬も面白かったですし、さらに宮廷の後継者争いも絡んで終始緊張感があり見応えがありました。
その中にロマンスが上手く溶け合っていて、「愛」の行方も気になる展開になっています。
主要人物は丁寧に描かれているので、それぞれの人間性や心情がよくわかり辛さも切なさも怒りも伝わってきました。そのため感情移入もしやすかったです。
細かく見れば多少の矛盾を感じることもありましたが、よく考えられた物語だと思います。何より一難去ってまた一難の展開はスピード感があり飽きずに見られました。
映像がとてもきれいでその事も印象に残りました。
陸安然(りく・あんぜん)=邢菲(シン・フェイ)
穆澤(ぼく・たく)=経超(ジン・チャオ)
穆川(ぼく・せん)=翟子路(ジャイ・ズールー)
蘇城の豪商・陸家の嫡女の安然は父親と共に水路や航路、港の事業にあたり、知識も豊富で信頼も得ていた。18歳の誕生日には父から全権を引きつぎ、陸家の当主となる。
ある日、安然は穆懐恕(ぼく・かいじょ)に出会い求婚され、約束の証としての玉牌を受け取った。
それから2ヶ月後、陸家に朝廷からの使者がやってきた。第2皇子の慶王・穆澤(ぼく・たく)が安然を王妃に迎えるという詔を携えてきたのだ。実は結婚を約束した穆懐恕は身分を偽った慶王だった。
婚姻から5年経ち安然も息子を授かり幸せな日々を暮らしていた。しかしその息子が突然事故で亡くなってしまう。
悲嘆にくれる自分とは違い、息子の死も顧みず冷静でいられる穆澤に安然は漠然と不信を抱いた。更に弟の戦死が伝えられ安然は倒れて意識を失ってしまう。
密かに安然を慕っている第9皇子・穆川(ぼく・せん)のおかげで長い眠りから覚めた安然。この間に弟はすでに埋葬され、更に皇帝崩御に伴い穆澤が新たな皇帝となっていた。
心の傷も癒えたころ安然は再び懐妊するが喜びも束の間、次々と悲劇が襲う。
皇太后が亡くなり、この死に疑問を呈した穆川が幽閉される。そして安然は穆澤が息子の死の真相を知りながら隠していた事を知った。
実家の陸家は策略により一族が処刑となり、更に穆川も毒牌を賜り・・。
安然は自分が穆澤の野望を叶えるひとつの駒として利用された事に気づき、全ての悲劇が自分の婚姻から始まったことを知る。そして後悔と絶望の中で火を放ち・・。
ところが気がつくと安然は10年前に穆澤に出会った日に戻っていた。忌まわしい記憶のあるまま彼女は人生をもう一度やり直すチャンスを得る。
覆流年 復讐の王妃と絶えざる愛 | ドラマ | BS11(イレブン)|全番組が無料放送
以下ネタバレあります。
「覆流年」というタイトルでなんとなく展開の予想もつきました。リピート人生のドラマは珍しくはありませんし、そういう意味では新鮮味は感じませんでした。
人生の中には後悔はつきもので、あの時こうしていればという事は誰にであると思います。
ヒロインの安然は自分が選択した結婚が全ての悲劇の始まりであり、二度目の人生では一族を守り抜き、憎い相手に復讐をしようと知恵も勇気も振り絞ります。同じ轍を踏まないよう先回りして事に当たります。
二度目だからと言って全てが上手く行くわけでもなく、同じような悲劇に会うこともあり、そこに運命やリアルさが感じられました。
序盤で安然は愛する穆澤(ぼく・たく)に嫁いで幸せだったにもかかわらず、その後の悲劇は彼女を絶望の淵へ追いやりました。彼女の悔しい思いも後悔の念も十二分にわかるので、二度目の人生では思いを遂げて幸せになって欲しいと全力応援で見ていました。
ただ敵もさるもの、見ている私も安然と一緒に焦り、天を仰ぎ、落胆し・・。
そんな風にハラハラしながら飽きることなく見ましたが、振り返ると安然もかなり冷酷で残酷だったりして驚かされることもありました。
復讐劇を見ていると、結局は復讐など忘れて自分の人生を楽しむべきだと思い知らされます。安然に対しても復讐など考えずにと思いますが、そうはさせてくれないんですね。敵は同じように迫ってきますから。
こういう所で運命の怖さを感じましたが、展開としては面白かったです。
安然の復讐相手は穆澤です。この人は何もかも計算づくで好きにはなれなかった。親の愛情を感じられずに育った気の毒な人でもありますが、自分の欲だけに忠実な人。ひねくれ根性丸出しの感じも哀れでした。
でも安然の事は本当に愛していたのかな?でもあれだけの事をして無理な相談という言うものです。安然に騙されているとも知らず、都合よく考える辺りは可哀想にも感じました。
最後の最後までついてきてくれた臣下もいたし、ある程度の人望もありカリスマ性もあったから野望などに取りつかれず誠実であれば結果はおのずとついてきたのではないかと思ったり。自業自得・・残念でした。
父親(皇帝)の愛情を強く欲する皇子はドラマによく登場しますが、普通の親子関係ではないし、いろいろと難しいのでしょうね。
そしてこの穆澤とは正反対の穆川(ぼく・せん)ですが、兄・穆澤との絆は確かなもののようでした。兄がいたからこの人は孤独ではなく、欲もなく温厚で善良な人に育ったのでしょう。
穆川が爽やかな印象なので、このドラマの中では癒しでした。
安然も二度目の人生では穆川を選んで上手く行くかと思えば、そうでもなかった。紆余曲折が待ってました。こういう展開もこのドラマの優れたところだと思います。
彼は安然に酷い仕打ちをされてもずっと一途な所が可愛い。そして安然を守るためにはこのままじゃダメだと目覚める姿は頼もしかったです。
そして何より安然への深い愛が純粋で、それが辛く苦しい。穆澤に嫁いでいた安然ですから、義理の弟とハッピーエンドなわけない(でしょ?)・・と言うところでこの二人のロマンスも静かに終わりました。
全体的にスピード感、緊張感があり、ロマンスも美しく描かれていて充実した内容でした。でも幸せになった人は一人もいませんでした。
最後は安然の見た夢で終わっています。それが温かくも感じましたが、切なくもありました。
実はこのドラマには番外編というものが存在するらしく、5年後?に安然が穆川のもとに戻ってきて「めでたし」と言う事のようなのですが・・。
まぁ二人で幸せになるのならそれに越したことないのかもしれませんが、やはり静かに別れて未来に思いを馳せるような終わり方のほうが余韻もあってこのドラマに相応しい気がしました。
最後まで読んでくださってありがとうございます。