「花青歌~悪役皇子の花嫁~」 花青歌 2024年 优酷
★★★★★
最初から最後まで面白かったので★5です。ちょっと甘いかなとも思いますが、テンポ良い展開と物語の面白さで毎回楽しみでした。
ただ、予告などを見た時はキャストに魅力を感じることが出来ず、また小説家が小説の中に入り込むという設定にも新鮮味を感じなかったので、視聴することを迷いました。とりあえず見て3話くらいで決めようと思っていました。
最初からかなり引き込まれました。展開が早くしかもわかりやすい。ラブコメという紹介もありますが、それほどコメディ色が濃くなかったことも良かったです。
時代劇ですのでお決まりの皇宮内の権力争いもありますが、肩の凝らない程度のものです。問題は次々に起きますが、サクッと解決して後を引かないのも良かったです。
一方で最初から最後まで復讐ということがテーマにあるのですが、愛憎劇のようなドロドロ感はゼロです。執拗な嫌がらせもないのでのんびりとみられました。
ロマンスという面では胸キュンもあったし、切なく泣けるところもあったし、それぞれの気持ちがきちんと伝わってきて感情移入も出来ました。
全体的に漫画チックで稚拙な感じは否めないのですが、それでも政争の緊迫感や恋するドキドキなどが無理なく描かれていて、何よりもわかりやすい展開がいいです。
登場人物も多くなく関係性などで混乱することもないので、中国ドラマ初めての方にも楽しんでいただける作品だと思います。
花青歌(か・せいか)=宋伊人(ソン・イーレン)
紀楚(き・そ)=丁澤仁(ディン・ゾーレン)
紀雲(き・うん)=孫祖君(クリス・スン)
公冶棋 (こうやき)=林鹿(リン・ルー)
林夕瑶(りん・せきよう)=朱容君(チュー・ロンジュ)
紀菀児(き・えんじ)=張悅楠(ジャン・ユエナン)
大梁国を舞台にしたネット小説「雲夕瑶」、悪役の紀楚が主人公でもある紀雲を殺して皇位を簒奪するという結末は読者たちの怒りを買いバッシングの嵐。
そしてPCの画面には「結末を変更しろ!」というメッセージとともに呪いの言葉が。作家は変更などあり得ないと拒否し、寝入ってしまったが・・。
作家が目覚めるとなぜか花嫁衣裳を着ていて、侍女には新婚初夜に律王を怒らせてはいけないとたしなめられる。
律王とは自分が書いた小説「雲夕瑶」の登場人物で冷酷な悪役・紀楚のことだと思い至り、自分は自分の書いた小説の中に入り込んでしまったのだと気づく。
更に紀楚の妃になるのなら自分は皇后の姪の花青歌で、紀楚によってまもなく殺される運命だと思い出し青くなった。
逃げるために右往左往していると、正に紀楚がやって来て・・。しかし太子の紀雲に助られ九死に一生を得る。
一方の紀楚は律王妃となった花青歌と過ごすうち、自分のしようとすることが彼女に筒抜けな事を不思議に思っていた。
「花青歌~悪役皇子の花嫁~」公式サイト|SPOエンタメ倶楽部
以下ネタバレあります。長いです。
なかなかよく考えられた物語だったと思います。
興味を引かれたのは、今は花青歌となった小説家のヒロインが小説の中では追求していなかった登場人物の裏側の人生に思いを馳せるところです。
悪役キャラの紀楚も自分が決めた設定のために子供のころから大変な苦労、辛い思いをしていたことを知り、自分がそうさせてしまったと気づきます。
紀楚は復讐の鬼のような設定ではありましたが、そこに至るまでには心の痛みや辛さがありました。本当の彼の姿に接しヒロインの気持ちも次第に変化していきます。
小説の中に入ってしまったヒロインが結局は現世界に戻るという展開でしたから、切ないシーンは想定内ですが、どうハッピーエンドに持って行くのか気になっていました。とても良い最後でした。くどくなくスッキリ、かつ安心できる終わり方でした。そんなところも高評価に繋がりました。
ドラマには3組のカップルが登場します。
【紀楚と花青歌】
ヒロインは花青歌となって自分の書いた小説に入り込み、悪役の紀楚と恋物語を展開しますが、この二人の気持ちの動きも自然で良かったです。
愛し合う二人が仲良くしている姿は見ていて楽しかったし、ずっとこのままであれば言うことなかったのですが・・。
紀楚は母親を死に至らしめた者への復讐に燃えていて長い間周到に準備してその日を狙っています。花青歌は虚しい復讐など諦めさせたい。愛が彼を変えられるか・・というのも見どころの一つです。
当初は悪役キャラの紀楚ですが、実は辛酸をなめた分思いやりもある人物でしたし、何より花青歌に一途です。
だからこそ花青歌が死んで現世界に戻ってしまうシーンは辛くていたたまれませんでした。自分の腕の中から愛する人が霧のように消えてしまう、その衝撃を想像すると涙が止まりませんでした。
その後、紀楚は皇帝となり天寿を全うして亡くなりますが、この間どれだけ花青歌を思いながら過ごしたことか・・それを思うと本当に切ない。
でも彼には自分が死んだら彼女の元へ行けるという希望があり・・本当にそうなる。記憶もそのままに・・。生涯妃は持たず、死を急ぐこともせず皇帝として国を繁栄に導いた末の事というのも素晴らしいです。
そしてドラマチックなエンディングでした。😭
現世界で再び巡り合った二人の行く末を見たい気もしましたがそんな陳腐な事はせず、想像も掻き立てられる最高にロマンチックなエンディングだったと思います。
紀楚を演じた丁澤仁(ディン・ゾーレン)はアイドルグループ出身。メイクのおかげ?もあるのかと思いましたが、時々の印象が変わるのは流石でした。
眼差しの表現に力を入れたそうですが、その成果が発揮され深みのある人間像になっていたと思います。
【公冶棋と紀菀児】
公冶棋は紀楚と共に共通の仇を討つことをずっと計画していました。そんなことを知らない紀菀児は積極的に公冶棋に近づきます。お嬢様らしい無邪気さが可愛いです。
実は紀菀児は公冶棋の仇の娘なんですね、運命は残酷です。
最後は愛し合うようになり、彼は一度は仇討ちを諦め二人で幸せに暮らすのですが、思いがけない展開で・・。
公冶棋は家が断絶しずっと苦労を強いられて来て、それでも復讐ではなく愛を選びました。でもいざ卑怯な仇を前にすると憎悪が抑えきれず、愛した紀菀児を意図せずですが手にかけてしまう・・本当に不幸な人でした。
正直ちょっと酷いなと思う残酷な展開でした。今振り返っても涙が出ます。😭
ただ、この二人の悲恋物語があってこのドラマを忘れられないものにしているようにも思いました。
因みに公冶棋がいつも連れていた金魚はどういう意味があるのかすごく気になっていたのですが、種明かしは無かったですよね?リラックスするためのペット?
金魚は八宝の一つで邪悪を退けると言われており、また金運の象徴でもあるようです。
公冶棋を演じる林鹿(リン・ルー)の手が美しくて、うっとりと見てました。
【紀雲と林夕瑶】
太子の紀雲は皇位などに興味はなく、静かに暮らせれば良いと考えていました。でも皇后である母親の邪な欲のせいで、どんどんその夢から遠ざかってしまう。
彼の気持ちがわかるだけに身につまされました。息子の為という名目で周りの人を殺め自分の思いを遂げる皇后のなんという浅はかさ。
善良な紀雲は母親の罪を償うために自分の命を差し出すしかなす術はなかったですね。皇后の悪事を止めるのはこの方法しかないと考えたのかもしれません。
皇后も母親として紀雲の思いを知ろうとしなかったことが敗因だったけれど、結局は何をしたかったのかよくわかりませんでした。
一番複雑な思いを抱えていただったろうと思うのは紀雲の妻となった林夕瑶です。彼女は紀雲が花青歌を好きな事を知っていて、それでも彼を愛し傍で助けようという人。
簡単ではなかったと思います。所々で花青歌に対する紀雲の思いは態度に現れていましたから。悟りを開いた仙女のような人でした。
でも二人は良い人生を送れたようで良かったです。ただ紀楚や公冶棋の事を思うとなんだか複雑でした。
振り返るとこの3組のカップルが3様で面白いのです。
愛し抜いても愛する人と別れる運命だった紀楚と公冶棋。
それでも紀楚は希望があり、おそらくそれだけを信じて生きて、そして奇跡が待っていました。主人公ですから本当にハッピーエンドで良かった。
一方の公冶棋に残ったものは絶望だけ。いつか自分に迎えが来ることを待ちながら二人の墓を守って生きていくんでしょう。素晴らしい医術を持っているから立ち直って欲しい。紀楚が手を尽くしただろうか・・きっとそうしたと思います。
紀雲は林夕瑶を情熱的に愛したわけではないけれど、お互いを大切に思いながら暮らす・・これも一つの愛の形ですね。
B級とも感じるドラマでしたが、最初から最後までとても面白かったです。ドラマは面白くなくちゃ。
最後まで読んでくださってありがとうございます。