ふくみみdiary

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「墨のゆらめき 三浦しをん」他:2023年2月私のオーディブル

2月は好みの作品と会うことが出来て、思いの外サクサク聞くことが出来ました。
一番心に残った作品を記事タイトルにしていますが、聞き終わった順に紹介します。

多少ネタバレもあります。

 

16.硝子の塔の殺人 知念実希人 ナレーター:高梨謙吾

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まるでお芝居(演劇)を見ているようでした。ナレーションが素晴らしすぎる。複数の登場人物の演じ分けが完璧、感服しました。その上、とても聞きやすい声で疲れませんでした。

面白いミステリーと評価の高い作品ですが、実は私は書籍で途中挫折しています。それもあってどうかな?と思いながら聞き始めましたが、最後まで一気に聴き終えました。面白かったです。

殺人の方法や犯人の動機を知れば、なかなか挑戦的な作品だなと思いました。思いもよらない展開が次から次へと続く凝ったストーリーで、スピードもあるので飽きることはありませんでした。

ただ名探偵、名探偵を連呼されるのがちょっと鼻についたのと、ミステリー知識のひけらかしとも思える部分にはちょっと辟易としました。目で追うのであれば飛ばせるでしょうから、これは朗読という形が余計にそう感じさせたのかもしれません。

17.珈琲屋の人々:1 池永陽 ナレーター:今賀竣

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下町の珈琲屋の主人は人を殺した前科者の行介。その珈琲屋に集まる人々のそれぞれの話が短編として収められています。

珈琲屋は誰にも打ち明けられない心の問題を持ち寄るような優しい場所のようでした。物語が進む中でこのお店の様子や街の雰囲気も想像出来ましたし、この店に集う人々が行介の幼馴染や顔見知りであるという人間関係がなんとなく心をほんわかさせてくれました。

ただ近所の人の話といっても結構ヘビーな内容でびっくり。不倫、売春、老いらくの恋、そして行介が殺してしまった男の妻の話など。身につまされるような話もあり考えさせられました。

そしてずっとバックに流れている行介とかつての恋人冬子との微妙な関係。

どの話もきっちりとした結末は描かれていないので、その後の展開は想像するしかありません。でもそれがまた面白く、楽しむことが出来ました。

最後の冬子の「こういう関係もいいよね」という言葉に本当にそうだなと思い、気持ちよく終わりました。

シリーズのようなので続編も聞いてみたいです。

 

18.アクロイド殺し アガサ・クリスティ ナレーター:前田弘喜

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ミステリーの名作ですから何度か書籍で読んでいます。内容云々よりも朗読ではどういう風かなという興味で聞きました。やはり知っている内容であっても面白く一気でした。

ただやはりNHKでの熊倉一雄さんのポワロの声に聞き慣れているせいか、多少の違和感と戸惑いを感じました。声で人物のイメージもかなり変わりますね。でもこれは仕方のないことです。

 

19.墨のゆらめき 三浦しをん ナレーター:櫻井孝宏

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素晴らしい作品でした。皆さんに聞いてほしい!

今までの読書歴の中でこれは!と思う作品はいくつかありますが、これもその一つです。

テルマンの続力(つづき・ちから)が顧客の依頼で筆耕士として登録している遠田薫(とおだ・かおる)に宛名書きをお願いすることから始まる物語です。その「字」から受けるイメージとはかけ離れた型破りでいい加減な遠田はミステリアスな面も持っていて・・。

登場人物一人ひとりがとても魅力的ですぐに引き込まれました。特に主人公・力(ちから)の感性が素晴らしくてスゴイ人だなと思いました。結局これは作家の感性、感服しました。力が段々と書の魅力に嵌っていく様子も、さも自分がそうであるように興奮しました。

文章力の凄さ、表現力、感性に圧倒された7時間弱でした。くすっと笑えるところもあるし、しんみりとする所もある。小学生も猫も登場する、全体的に温かい空気の流れる心に残る作品でした。映画にしてもヒットしそうだなと思いました

そして、ナレーションが素晴らしいです。強弱、スピードの変換、聞きやすいししっかり情景も感情も伝わってきます。櫻井孝宏さんのナレーターがあって更に完成度の高い作品になっています。

「字」から書いた人のイメージって浮かびますよね。「字」は心を映すものでもあるようです。

でも題名がなんで「ゆらめき」なんでしょう。

 

20.ホテル・ピーベリー〈新装版〉 近藤史恵 ナレーター:松本章太郎

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面白くないとは言いませんが、気分の良い内容ではありませんでした。それでも前半はハワイ島の様子を想像しながら面白く聴いていました。

でも主人公の木崎淳平がなんとも身勝手で子供で好きになれない、共感できない。レビューにもある通り確かにちょっと気持ち悪い人。

紹介文では傑作ミステリーとなっていましたが、ミステリーとは思えません。確かに事件は起こりますが、もう最後の最後ですし謎解きとか真実に迫るというような緊迫感はないです。

読後感があまり良くなかったのですが、ナレーションはとても聞きやすく良かったので少しもったいない感がありました。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。