「YOUR HONOR~許されざる判事~」 유어아너 2024年 ENA
★★★★★
大ヒットしたイスラエルドラマを原作としたリメイク作品。イスラエルドラマは経験したことがなく興味が湧きました。
ガツンと重厚な社会派のサスペンスでした。厚みも深みもあり心に訴えかける傑作です。
スピーディな展開で張り詰める緊迫感が最後まで続き面白かったです。見始めたら途中では止められないタイプのドラマです。
ただ重く暗い内容ですし、激しい乱闘シーンがあったり、たくさんの人が死ぬので苦手という人もいるかもしれないです。
ストーリーは複雑で、私はだんだんと誰が悪人で何が悪なのかわからなくなってしまいました。それぞれの思いがわかるので辛く苦しい、どうしようもない悲劇です。
主人公二人の鬼気迫る形相に息を飲み、予想外の展開にハラハラし、怒りも湧いたし、涙も・・。
でもそれは実力派俳優の素晴らしい演技があってこそ。若手もベテランも確かな演技で楽しませてくれました。
特にガンホン役のキム・ミョンミンの演技は迫力がありました。冷酷でありながらも時として優しい父親、その二面性がすごく自然に表情に出ていて圧巻でした。
判事役のソン・ヒョンジュは常に崖っぷち感が出ていて流石の演技でした。息子を守りたい父親の心情や自身の名誉を守りたいという俗物感も出ていたし、高潔な正義が崩れていく様子がとてもリアルでした。
ホヨン役のキム・ドフンもすごく良かった。どの俳優も役にドンピシャで気持ちが良かったです。
何もかもがよく考えられていて面白く見ごたえのあるドラマでした。

ソン・パンホ(ソン・ヒョンジュ)=判事
キム・ガンホン(キム・ミョンミン)=ウウォングループ会長
ソン・ホヨン(キム・ドフン)=パンホの息子、大学生
キム・サンヒョク(ホ・ナムジュン)=ガンホンの長男
キム・ウン(パク・セヒョン)=ガンホンの娘、サンヒョクの異母妹
服役中のウウォングループのキム・ガンホン会長は、愛息のサンヒョンの誕生日にバイクをプレゼントする。サンヒョンはそのバイクで走行中に事故に遭い命を落とした。
サンヒョンをはねたのは高潔で信頼厚い判事ソン・パンホの息子・ホヨンだ。ホヨンはまだ息のあったサンヒョンを置き去りにして現場から逃げていた。
パンホはホヨンに自首を促し一緒に警察署に赴く。しかし被害者が元暴力団の会長の息子だと知ると、報復を恐れホヨンの命を守るため事故を隠蔽することを決意する。そして入念に一つ一つ証拠を消していく。
その頃、息子の死を知り残り4ヶ月の刑期を前倒ししてガンホンが出所した。事故後すぐに処置していればサンヒョンは助かったかもしれないと聞いたガンホンは悲しみと怒りに震え、復讐のため犯人を探し始める。
そして二人の父親は息子のために激突する。
以下ネタバレあります。
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ストーリーには意外性もあり、展開もスピーディで飽きずに面白く見ました。話数も少なめで一気に楽しめる作品です。
序盤は判事パンホのただ息子を守るという切実な気持ちと、それによってあらぬ方向へ進んでしまう愚かさに私まで飲み込まれて行きました。
実はパンホはウウォンとは過去に因縁がありました。彼はそれには蓋をして静かに暮らせていると思っていたんでしょう。でも簡単に心から消し去ることは出来ない。それは息子も同じで・・。
パンホとしては息子まで奪われるなんてと思うと、もはや正気ではいられなかったのかもしれません。自分の信念も忘れてただただ証拠隠滅に邁進します。
気持ちが痛いほどわかったので、上手くいってくれればと思いましたが、うまくいくはずないですね。墓穴を掘るように罪を重ね、引き返せない沼にはまって行く姿が辛すぎました。
一方のウウォンのガンホンは刑務所にいながらもその力は絶大。
この人は冷酷だし残酷ですが、家庭は大事にしていて父親としての優しさも持ち合わせています。時折見せる温かい表情に、ついこの人は本当は悪い人ではないのではと思ってしまいました。それがまた怖さでもあります。
最後まで見て救われる人がたったの一人もいない。やりきれない気持ちになりました。
勧善懲悪では終わらないので消化不良ですし、彼らのその上に更に悪党がいて状況を窺う様子に絶望を感じました。
最後にパンホとガンホンが砂浜で語り合うシーンが印象的でした。
お互いに自分たちが犯した罪に向き合い、反省し悔いている姿でした。結局二人は父親として子供を守れなかった。何もかもが自分の罪が招いた報い、空っぽになったような二人は痛々しかったです。自分が生きていることを虚しく感じているように見えました。
でも今更反省したところでどうなるのか・・。
復讐も遂げられず死んでしまったホヨンも気の毒でしたが、聖女のように清らかなウンが可哀想でした。
本当ならウンもホヨンとの恋をもっと楽しめたはず。ホヨンの最後の「ごめん」が辛すぎて涙が止まりませんでした。この二人の関係は切なかったです。
どうしてこんな悲劇が、一番悪いのは誰?と考えずにはいられません。
ガンホンの長男のサンヒョクがいなければ・・でもサンヒョクをあんな人間にしたのは誰?
そして検事も、パンホの友人の国会議員も、大統領府の秘書官もひどい。むしろパンホやガンホンよりも悪党に見えました。
この先がまだまだ心配になりました。
ところで今回の作品では「許されざる判事」となっていますが、アメリカ版は「追い詰められた判事」という題なのですね。
「許されざる」者は判事だけではないし、「追い詰められた」のほうがしっくりするような気がしました。
チャンスがあれば元となったイスラエルのドラマ、そして他の国でのリメイク版も見てみたいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。