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中国ドラマ「摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~」 感想〜現代社会の悪夢

「摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~」  
原題:「摩天大楼 (A Murderous Affair in Horizon Tower)」
2020年  腾讯视频(テンセントビデオ)

★★★★☆

台湾の陳雪の小説「摩天大楼」を映像化したドラマ。もしかしたら小説のほうがもっと深く感じるものがあるのかなと思いましたが、それでも多くの謎に満ち、緊迫感のある展開で最初から最後まで飽きることなく見終えました。ミステリー・サスペンスですが、現代社会が抱える問題がいくつも盛り込まれていて色々と考えさせられました。

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画像:百度

ジョン・メイバオ:アンジェラベイビー
ジョン・ジングオ:グオ・タオ=ベテラン刑事
ヤン・ルイセン:ヤン・ズーシャン=女性新人刑事

カフェを営む美人店主メイバオがタワーマンションの自宅で遺体となって発見される。事件を担当することとなったジョン・ジングオとヤン・ルイセンはマンションの住人や関係者に事情聴取を行うが、彼らが抱える秘密と嘘でますます謎が深まっていく。迷宮に入り込んだような状態の中、メイバオの過去が明らかになり真実に近づくが・・。

摩天楼のモンタージュ~Horizon Tower~ ドラマ公式サイト

以下ネタバレあります。

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アンジェラベイビーが主演と紹介されていますが、これにはちょっと首をかしげてしまいました。ストーリーでは中心人物には違いないのですが。

アンジェラベイビーは苦手。メイバオという女性が儚く幸薄い女性なので、その感じは良く出ていたと思います。

他の俳優陣の中ではベテラン刑事を演じたグオ・タオさんが良かった。ちょっととぼけた風貌で暗くて重いストーリーの中で、少しホッと息がつける感じでした。新人刑事とのコンビ具合も良かった。

そして、メイバオの母親ジョン・ジエを演じたニー・ホンジェさんが印象的でした。独特の雰囲気があって役にもピッタリでした。

ストーリー的には一人ひとりの証言に終始振り回されるような展開で先が読めず、謎解きとして面白かったです。

最初はミステリーとして見ていましたが、後半はあまりにも悲惨で残酷なメイバオの人生の不公平感に辛くなりました。今でもその辛さが澱になって心の底に残っているような感じです。深い作品だったので、原作の小説も気になりました。

真実を追求する、犯人に迫るストーリーではありますが、その中に今の社会に潜む問題が描かれています。家庭内暴力(DV)、貧困、性犯罪被害女性への偏見、PUA。そして時には正義の前に立ちはだかる法。

中でも「PUA(Pick Up Artist)」、この言葉は初めて知りました。中国での新しい言葉のようで、もともとはナンパ師を指して使う言葉だったようですが、それが転じて「相手をコントロールしようとする、洗脳しようとする人や行為」のことを言うそうです。

日本でも洗脳やマインドコントロールは一時期大きな問題として盛んに報道されていました。他人事では無く、本当に怖いことです。

DVなどでは暴力を振るう相手と関係を断ち切りたいのに、度重なる暴力で一種の洗脳状態に置かれて自分からは逃げることが出来なくなってしまうケースがあるそうです。こういう場合は第三者が介入しないと上手くいかない。

まさにメイバオの母親がそうでした。彼女を見ていて本当にイライラしました。子供のことを考えていないのか?将来を心配しないのか?と腹がたちました。でも、暴力で恐怖を植え付けられて逆らえない、その気力も失せる、つまり洗脳状態だったんですね。

でも、助けてくれる第三者がいてうまくいくかと思ったのですが・・。

まさにその諸悪の根源、悪魔のような男は成敗されて落着なのですが、心から晴れ晴れとした気分にはなれませんでした。

ストーリーとしては良く練られた質の高い作品です。でも見終わってみるとミステリーと言うよりも、暗く重い社会派ドラマでした。

幸せな縁もあれば、このドラマのような恐ろしい縁もあると考えると本当に怖くなります。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。

では、また。