何を読もうかいつも悩みます。6月に入って題名に「雨」がつく本を選んで読んでみました。
以下ネタバレあります。
192.あいにくの雨で 麻耶雄嵩
『高校生の烏兎(うと)、獅子丸(ししまる)、祐今(うこん)は親友。
ある日祐今は人里離れたところにポツンと建つ廃墟の塔に明りが付いていることに気づく。
3人で面白半分に塔に入ってみると、そこには男が倒れて死んでいた。この男は8年前に別れた妻を殺した犯人とされ、その後行方不明になっていた祐今の父親だと判明する。
烏兎と獅子丸は犯人探しを始める』
ミステリーです。個性的な名前や地名などが難しく、ストーリーに集中しにくかったです。
出だしが13章からというのも不思議。密室トリックの種明かしから始まっていて掴みはいいなと思ったのですが・・。
殺人事件の犯人探しと並行して高校の生徒会の闇が描かれていて、その内容に少し驚きました。生徒会ってこんな?
人間関係の複雑さがあって殺人事件が起こり、意外な結末に驚かされる展開は面白いと思いましたし、キャラクターも魅力的でした。
ただ、あれだけ殺人事件が起こるなら、それだけに焦点を当ててもう少し人物の心情を掘り下げ、コンパクトに展開したほうがわかりやすかったのではと思いました。
193.雨にシュクラン こまつあやこ
『念願の影山高校の書道部員となり張り切っていた真歩だったが、入学から2ヶ月後、父親が体調を崩し家族で父親の地元に引越すことになった。
真歩は往復5時間かけて通学することを決めるが、さすがに体力的にきつくなり高校中退。
ある日図書館に行った折、誘われて図書館の宅配ボランティアを始めることに。そして真歩が担当する老婦人の家で「アラビア書道」を知り、その文字の美しさに魅了される』
「シュクラン」はアラビア語で「ありがとう」の意味。とても爽やかで、ワクワクするような物語でした。 ジャンルは児童文学になるようです。
真歩は高校中退したことで、生きる上でいろいろな選択が可能なことを学んでいきます。落ち込んだり腐ったりせずに積極的に前を向く姿は頼もしかったです。
文字を書くことが好きだった真歩が運命的にアラビア文字に出会うのはちょっと感動的。アラビア文字は作中にもある通り、流れるようなリズム感がありとても魅力的です。
私も「アラビア書道」というのは始めて知りました。
真歩はアラビア文字を通して友達も出来て心にも弾みを取り戻し、新しい一歩を踏み出すことが出来ました。
清々しい青春物語でもあり、温かい家族、友情の物語でもありました。世界は広い、生き方は色々。
それ程ボリュームもなく、登場するのが良い人ばかりなのでサクッと気持ちよく読み終わりました。
「雨」に対するイメージが国によっても違うことに気づかされました。物語に登場するトルコ料理も美味しそうでした。
別世界を体験したように楽しかったです。おすすめです。

194.恋雨 柴田よしき
『会社をクビになった茉莉緒は鴨川の河原でテレビドラマのロケを眺めていて雨森海という俳優と出会う。
仕事を探していた茉莉緒はアルバイト募集誌の「映画のエキストラ大募集」という広告が目に止まり、早速応募。その撮影現場で雨森海と再会する。
ところが撮影中にエキストラの男性が変死して大混乱に。雨森海は殺されるのは実は自分だったのではと考えていた。
そんな中、茉莉緒は雨森海の所属する芸能事務所からスカウトされ、いつの間にか彼のマネージャーになることに』
芸能界でのマネージャーの仕事内容は多岐にわたっていて大変、芸能界をちょっと覗き見るようで面白かったです。
ミステリーでもあり、ラブストーリーでもありましたが、どちらも中途半端な感じがしました。茉莉緒のサクセスストーリーでもあります。
最後は切なくてちょっぴり泣けました。
195.雨鱒の川 川上健一
『母と二人暮しの心平は学校の授業もそっちのけで、絵を描くことと魚を捕ることが全て。そんな彼は耳の聞こえない小百合と心を通わせている。
しかし年上の英蔵も小百合に思いを寄せていて・・』
方言が使われていて少し読みにくさも感じましたが、その効果か?舞台になった農村の情景がありありと浮かんできて、没入感がありました。
大きな抑揚がなく地味な感じの作品でしたが、読むうちに瑞々しさや清らかさがじわじわと心に染みてきます。
前半の心平の生き生きとした姿は可愛かったし、雨鱒への思いやかかわりも彼の純粋さを表していて心を打たれました。
後半に入ると先が想像できる展開だったのが少し残念、でも純愛の結末にはひねりなど要らないですね。
私は主人公の心平は自分勝手に見えてあまり好きにもなれませんでした。でも芸術家というのはこういうものなのかも。
逆に最後の英蔵の男らしい決断に涙しました。
最後まで読んでくださってありがとうございます。