「メランコリア ~僕らの幸せの方程式~」 멜랑꼴리아 2021年 tvN
★★★★★
ストーリーの入り、展開が上手いなぁと感じたドラマです。
しばらく見て、また学校のゴタゴタかと少し気持ちを削がれた面もあったのですが、数学というテーマに惹かれました。
ストーリーは教育界、学校の不正を明らかにして、過去の汚名をそそぐという展開で進みます。大げさな復讐ということではないところがリアルな感じで良かったです。
登場人物は一人ひとりが丁寧に描かれていたので、それぞれの立場や人となりもよくわかりました。不正で多くの人物が絡み合っていますが、それ程混乱なく見られます。
社会派ドラマと見ることも出来ますが、珠玉のラブストーリーでもあります。でも、いわゆるラブストーリーだと思って見るとちょっとがっかりするかもしれません。幸せな二人のシーンがそうあるわけではなく、盛り上がりもなく、全体的に明るい内容ではないので。
だだ根底にはお互いの深く純粋な愛があって、それがすごく胸に迫りました。その愛によって本来の自分を取り戻すという感動の物語でもありました。
キャストではやはりイ・ドヒョンが良かった。青臭さの残る高校生も良かったし、社会人となった頼もしい姿もかっこよかったです。
チ・ユンス(イム・スジョン)=数学をこよなく愛するアソン高校数学教師
ペク・スンユ(イ・ドヒョン)=アソン高校生徒、消えた数学の天才少年
ノ・ジョンア(チン・ギョン)=アソン高校の実力者、教務部長
ソン・イェリン(ウ・ダビ)=数学は苦手のアソン高校トップの生徒
チ・ヒョヌク(オ・グァンロク)=数学者、ユンスの父親
アソン財団が運営するアソン高校は名門と言われながら不正のはびこる高校。この高校に教務部長の希望でチ・ユンスが赴任する。
ユンスは数学は美しいと言い、数学を心から愛する数学教師だ。
ユンスは学校で、偶然に列車で知り合ったペク・スンユと再会する。彼は成績も芳しくなく内向的な生徒だが、数学的な視線で被写体を捕らえる彼の写真を見て興味を持っていた。そして彼がかつての天才数学少年だったと知る。
ユンスは今では何故か心を閉ざして数学にも向き合おうとしないスンユを救いたいと思うようになる。しかし、その教師としての純粋な気持ちが妬みや嫉妬を呼び思わぬ方向へ・・。
さらに教務部長のジョンアは自分の野望の妨げになるとユンスを警戒するようになる。
韓国ドラマ「メランコリア ~僕らの幸せの方程式~」 | BS朝日
以下ネタバレあります。
韓国ドラマでは特権階級による不正やいじめ、格差社会などが登場しますが、大げさに描かれているのだろうと思う反面、これだけ題材になるのだから身近な問題なんだろうなと思います。
親によってすでに生まれた時から人生が決まってしまうなんて悲劇です。朝鮮時代の名残なんでしょうか?
このドラマでも生まれの差や特権階級について描かれていますが、それほど凄惨ないじめシーンはなく落ち着いて見られました。その点は良かったです。
物語の前半は4年前のペク・スンユがまだ高校生の時、後半は現在と分かれています。過去と現在が行ったり来たりする展開ではないので、わかりやすかったです。
前半は過去に起こった事が原因で殻に閉じこもってしまったスンユを数学教師のユンスが導き、再び彼を数学の世界へ引き戻します。後半は醜聞により学校を追い出され隠れるように生きているユンスをスンユが急がず根気強く再生に導きます。
前半でユンスとスンユが黒板に向かってチョークを走らせていた姿を見て、2人は数学を通して心も思考も共鳴していて、これはもう愛だと思いました。この2人の間に割って入るなんて無理なような気がしましたが、ユンスは婚約してるんですね。
ソンジェとユンスの婚約に至る過程は描かれていないので、ずっと何故ソンジェと結婚する気になったんだろうと疑問でした。最初からソンジェの一方通行のように見えましたから。
でも最後はソンジェもそんなに悪い人ではなかったんだとわかりました。本当は優しい人のようでした。
彼も本来の自分の姿に戻れたようで良かったと思いました。
印象に残っている登場人物はユンスの父親のチ・ヒョヌクです。今は精神を病んでいる数学者ですが、いざとなるとスンユにも的確なヒントを与えています。この人がいなかったら救われなかったと思う事もありました。
数学に飲み込まれてしまったような人で気の毒でもありましたが、最後は弟子たちにも恵まれてきっと幸せだったでしょう。弟子たちとはしっかりと共鳴していましたね。
その他にも興味深い登場人物がたくさんいますが、結構面倒くさい人が多かったです。自分の思い通りにならなくて苛立っている人が多すぎる。
私はスンユの両親が嫌いでした。特に父親。子供は自分の所有物ではないし、ユンスには辛い経験でした。後に取り憑かれていたものが取れたように理解し合えたようなので、穏やかな人生になるでしょう。
もちろんノ・ジョンアには本当にイライラさせられました。感情を抑えて優雅にすましている姿にはムカつきましたし、洗脳というか口車にはうんざりしました。
でも私以上にイライラしていたのはジョンアだったかもしれないですね。制御できないチ・ユンスの出現ですべてが狂ってしまって、まさに青天の霹靂だったと思います。
実は後半に入って前半と同じようなやり口でジョンアが悪さをするので、少し退屈しました。ストーリーの中ではこの事だけが少し残念でした。
過去の不正も含めてすべての不正が明らかになり、ジョンアとの戦いも決着しました。この後の最終回のストーリーがとても素敵でした。
それまで敵対していた人たちが仲良くなったり、イェリンも禊を済ませて未来は明るい感じです。
全体を通して重苦しく緊張感も漂うストーリーですが、ユンスとスンユの愛はずっと揺るがず静かに流れていました。スンユの一途さがカッコいいし、ユンスの表に出さない愛も深かった。
「スンユはユンスに謝罪を受けさせたいと言っていた、幸せにしたいというより心がこもっている気がした」、ソンジェが言っていた言葉です。彼もスンユのこの言葉に愛を読み取っていたんでしょう。
とにかく、最後はハッピーエンドで良かったです。繊細に丁寧に描かれていて、静かな展開が心地よい作品でした。
韓国ドラマって本当にロマンチック。そして数学もロマンチックだなと感じました。
最終回がすごく好みだったで★5にしました。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
では、また。