暑さのせいか集中力を切らしてしまう中、読書にも身が入らなくなってました。でもなんとか4冊読了。
以下ネタバレあります。
221.「八月の母」早見和真
【越智美智子は家庭の愛情を知らずに育ち、父の死後母について家を出る。やがて男を頼って生きる母に見切りをつけ一人で生きていく覚悟を決めた。
美智子は必死に稼ぎ、久しぶりに実家を訪れる。しかし気を許した隙に必死に貯めた金を母親に盗まれ逃げられてしまった。
怒りや後悔の中、美智子は成り行きで母の残したスナックを継ぎ、そしてエリカを産む。エリカを幸せにしたいと願いながらも、自分と同じような少女時代を送らせることに・・】
実話をモデルにした作品だそうですが、本当に恐ろしく悲惨な内容です。最初から最後まで気持ちよく読めず、一度中盤あたりで挫折しそうでした。
現実にこういう事があるんだと驚きましたし、実感が湧かずどうしてこんなことになるのかわかりませんでした。
エリカには「勉強は現状を変えるための手段」と教えてくれた人がいたのに方向転換が出来なかった。周りが許さなかったとも言える。
紘子に至っては何度も考え直す機会もあっただろうに呪縛から逃れられなかったことに怒りさえ覚えました。
でもこの子たちをどうしたらよかったのか・・。
どんな理由があっても、過去がどんなに辛いものでも紘子の命を奪う理由にはなりません。最後にこの小説は何を訴えたかったのか?と考えてしまいました。ただ愛とか絶望を書きたかったわけではないでしょう。
同じようなことで辛く苦しい人たちに、明るい場所に這い上がれるヒントを投げかけているようにも思いました。
最後は少し希望が見えたような気がして、読後はそれほど重苦しさを感じませんでしたが、でも私はやっぱり美智子もエリカも理解出来なかったし許せませんでした。
222.図書館を建てる、図書館で暮らす 橋本麻里、山本貴光
約5万冊の書籍とともに暮らすための個人住宅である「森の図書館」は神奈川県の逗子市に建てられました。
「森の図書館」を考案した施主の二人と夢を託された建築家が書物と暮らすための家を建てるまでの過程が、それぞれの思いとともに語られています。
本書には写真や図も載っていて、おかげで難しい建築の説明もなんとか理解出来ました。施主の希望に沿うように知恵を絞る建築家の苦悩や奮闘ぶりも興味深かったです。
本に囲まれて生活する贅沢や個人図書館を持ちたいという夢は本好きの人なら皆持っているかもしれません。
だた施主二人の蔵書数は桁違いにものすごい。もうまるで書店のようです。
山本さんの本への愛と言うだけでなく、電子書籍がある現代においての紙の本との向き合い方はとても参考になりました。
「積ん読」も悪くないという考えにも目からウロコ。大事なのはそこに本があって、不意に目に入ることだそうです。
人生の中で出会う本はほんの一部だろうし、手に取った本はなにか縁があるんでしょうね。たとえ読み切れなくても、読んだ後に覚えていなくても・・。
そう言ってくれる人がいると少し肩の荷を下ろせるような気もします。

223.鏡の国 岡崎琢磨
【大御所ミステリー作家の室見響子が亡くなり、著作権も含め相続者となった姪の桜庭怜に編集者・勅使河原が訪ねてきた。彼は室見の遺作「鏡の国」を担当する編集者だ。
「鏡の国」は室見が小説家になる前に書いた作品で実体験をもとにしており、話題性も高く出版準備も着々と進んでいた。勅使河原は第三校を携えやってきた。
勅使河原は編集作業中に見過ごせない違和感を覚えたという。「鏡の国」には削除されたエピソードがあり、それは室見が読者に残した最後の謎ではないかと。
そして削除されたエピソードの原稿が残っているなら桜庭にも目を通して欲しいと言うが・・】
かなりの長編です。ミステリー感はあまり感じませんでした。むしろ恋愛、友情を描いている印象でした。
一言でいうとミステリーとしてパンチがなく物足りなさを感じました。
三分の一くらいまでは入り込めず、読み進むのに苦労しました。ようやく過去の事件の真犯人を追うあたりから物語にスピードも出てきて面白くなりましたが・・。
身体醜形障害や相貌失認ということが物語の大きなポイントだと思いますが、物語の中では偶然過ぎる気もして現実味を感じられませんでした。
「外見至上主義」に対する問題提起でもあると思いますが、それならもっと掘り下げて欲しかったです。
「反転」「伏線」というミステリーの構成も良かったのですが、サラリとしすぎていていたように感じました。
特に、本題?だと思った消されたエピソードがなんだかあまり意味を持たないようで、拍子抜けでした。
でもこの消されたエピソードで主人公というべき響の印象がガラリと変わるのは確かです。
224.アンジュと頭獅王 吉田修一
古典「さんせう大夫」を題材に森鴎外は小説「山椒大夫」を描きました。人買いに売られてしまう安寿と厨子王の波乱万丈の物語です。
子供の頃に読んだ「安寿と厨子王」はただただ悲劇の物語という記憶でした。調べると元の話では安寿は命を落としますが、森鴎外が最後はハッピーな結末にしたようです。
吉田修一版のストーリーは森鴎外版に沿っているようですが、更に自由な発想で楽しませてくれました。最後は現代が入り乱れてSFのようでした。
サーカス団でライオンの世話をしたり、株式とかフェラーリとかICタグなんて言葉も出てきて、その大胆さに驚きました。
最初にこの作品を読んでこういう物語と理解されると困る気もしますが、面白かったです。
文章が古典調なので最初は読みにくさも感じましたが、慣れてくると心地よいです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。