以下ネタバレあります。
196.神去なあなあ日常 三浦しをん
『平野勇気は横浜育ちの18歳。高校を卒業したらフリーターでもして生活しようと思っていた。
しかし思いがけず学校の担任が勝手に就職先を決めてしまった。それも林業の現場。勇気は神去村に行くことに。
携帯も使えない山奥の村に到着すると翌日から研修が始まった。そしてその後の現場でのスパルタ教育に逃げ出したくなり・・』
林業の世界、初めて知ることも多く、最後まで飽きずに読みました。すごく面白かったです。
平野勇気の神去村での1年が描かれています。山の情景も目に浮かび気持ち良く読みました。
都会育ちの勇気が林業の現場で悪戦苦闘している姿は、ときにはクスっと笑い、ときにはハラハラします。半べそかきながらも成長していく勇気の姿は頼もしいし、頑張れと応援したくなりました。
山の中の現場作業の過酷さ危うさも描かれていて、林業従事者の大変さを始めて知りました。
個性的な登場人物ばかりで楽しかったし、その関係性は温かでほっこり。勇気のほんのりとした恋も彩りを添えていました。どうなるかなぁ・・。
そして方言のおかげで柔らかな印象の物語でしたが、最後の祭りの場面は大迫力で起伏にも富んだ楽しい内容でした。
197.八月の御所グラウンド 万城目学
「十二月の都大路上下ル」「八月の御所グラウンド」の2編が収められていました。
駅伝と野球、どちらもスポーツを題材にした物語です。
『都大路を走る女子駅伝の大舞台、高校1年の坂東はピンチランナーとして走ることになった。でも彼女は方向音痴という重大な欠点があり・・』
『御所グラウンドで開催される草野球大会。彼女に振られて予定もなくなり猛暑の京都に残ることになった朽木はひょんなことから怪しげな草野球に参加することになる。しかし試合開始までに人数が揃っておらず・・』
「八月の御所グラウンド」は野球を題材にしていて爽やかなイメージがあります。
最後は戦争による悲しい過去が描かれ、そして万城目さんならではの不思議な世界に引きずり込まれます。重苦しくなりがちな内容でも笑いを誘うところが流石です。
涙のクライマックスでしたけど、読後感は清々しく、今穏やかに生きていられることのありがたさを感じました。

198.銀色のステイヤー 河﨑秋子
競走馬を育てる人々の物語でした。
ステイヤーというのが馬の名前だと勘違いしていました。競走馬のタイプを表す言葉で、主に長距離レースを得意とする競走馬のことをこう呼ぶそうです。
馬という動物には興味がありますが、競馬に親しんだことはありません。競馬場へ行ってみたいと思いながらも一人で行く勇気は今のところありません。
この小説を読んで、競走馬に関わる多くの人々、そして競走馬を育てる過程がわかって面白かったですし、細かいところに神経を使う仕事だなと思いました。
馬にも個体差があって、一流の競走馬にするのは苦労も多いのですね。そして馬自身にも負けて悔しいと思う気持ちがあるようで、それも興味深かったです。
残念だったのは、登場人物には魅力を感じられず感情移入も出来ずに終わってしまいました。そしてもう少し高揚感や迫力も欲しかったかなと思います。
競馬ファンの方なら情景が目に浮かびもっと楽しめるのかなと想像しました。
199.鎌倉うずまき案内所 青山美智子
アンモナイトを所長とする「鎌倉うずまき案内所」を訪れた人々が自分の思い込みや固くなった心を解放し、考え方が変わることで悩みが解消されていきます。
気づきのヒントをもらえる案内所なんですね。現実世界とは違うのでファンタジーになるのでしょう。
短編集ですが、それぞれの話が繋がってもいて、それが楽しいです。ただ時間が逆行して物語が進むので、あ〜この人は・・と思うと前に戻って確認することになり、それが少し大変でした。
ほっこりとして心が温かくなる物語です。
200.君をおくる 泉ゆたか
大切なペットをおくる人たちの4篇。表紙がほっこりと可愛らしい。
動物の死と向き合う話で悲しいのですが温かさを感じる部分もあり、読後感は悪くないです。
縁があって共に暮らした動物との別れ、いつかは・・とわかっていても辛いものですね。
登場するどの子も皆愛らしかったです。
表紙を手掛けたのはイラストレーターのkunomariさんです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。