ふくみみdiary

  日常のあれこれのほか、読書記録、ドラマ(韓国・中国)感想を残してます。

読書「遥かなる水の音 村山由佳」他

ネタバレあります。

188.オオルリ流星群 伊与原新

『久志は高校3年生の時、文化祭のために仲間とともに空き缶を使った巨大なオオルリタペストリーを作った。

出来上がって言葉では言い表せないほどの感動を味わったが、一つ苦い思い出が・・。

あれから28年が経ち、タペストリー仲間の一人のスイ子が故郷に戻ってきた。彼女は自分で天文台を建てようとしていた。

スイ子の計画を知って驚くが、高校時代の同級生が再度集まり天文台作りに協力する。皆で流星を見ることを楽しみに』

第二の青春物語という感じでした。読みやすい文章でスイスイ読めましたし、登場人物も個性的で魅力的、物語自体も面白かった。すごく良かったです。

天文学の専門的な話は少し難しく感じることもありましたが、それが良いスパイスになって物語に緊張感やメリハリが出来ていました。

星や宇宙に思いを馳せながら楽しかったです。そして最後は泣けました。

登場人物にも共感出来ました。

久志は自分の人生が思い描いたようには進まず、将来に漠然とした不安を抱えています。そんな時に再会したスイ子は高校生のときのままバイタリティにあふれ、自分の思うまま突き進んでいる。彼はスイ子に嫉妬します。

千佳は淡い恋心を抱いていた恵介の秘密を知りショックを受け、どこにもぶつけられない複雑な思いに苦しみます。恵介のことを全く知らなかった自分に腹がたつ。

久志の思いも千佳の思いもよくわかり胸に迫るものがありました。コンプレックスや焦りやいろいろなものがない交ぜになったドヨンとした気持ち。45歳になったからこその複雑さかも。

人生折り返した?45歳が熱い思いを一つにして再び仲間とともに天文台を完成させる冒険物語でした。こんな経験羨ましいです。

Youtube♪ ジャコビニ彗星の日 松任谷由実

189.王とサーカス 米澤穂信

『新聞記者の太刀洗万智は新聞社を辞め、フリージャーナリストを目指すことにする。

海外旅行特集の仕事を受けて、事前取材のためカトマンズを訪れた。

折しも王宮で皇太子による国王・王族殺害事件が起こり、カトマンズ市内は噂が飛び交い市民の不安がつのり大混乱に。

早速この事件の取材を開始した太刀洗。しかし取材を受けてくれた軍人が殺され、自分も警察に連行されることに・・』

2001年に実際に起こった「ネパール王族殺害事件」が盛り込まれています。

ネパール王族殺害事件 - Wikipedia

出だしは観光客気分でした。カトマンズの喧騒や乾燥した空気も感じられ、食べ物や飲み物の味まで想像できました。日本茶が美味しそうでした。

エキゾチックな世界に興味が広がって、物語にも自然に入り込めました。

王族殺害事件が起こってからはミステリーの様相になり、目の離せない展開になりますが、スピード感や緊迫感は薄かったように感じます。

謎解きというよりも記者の責任や読者との向き合い方などが焦点になっていて、記者としての葛藤が多く描かれた作品でした。

これを伝えたらどうなるのか?報道の影響を考え場合によっては伝えないという選択・・ハッと気付かされることもありました。史実に基づく記者の話も出てきて、問題点がわかりやすかったです。

太刀洗が冷静で強靭、記者のあり方を真摯に模索する姿には好感が持てました。

190.一人法師 なつむら・そうじ

じつは、一人法師はいつもは忘れかけているもう一人の自分自身なのです。

おとぎ話のような昔話のような、そんな短編集でした。

一つ一つのお話はファンタジー風のもの、なんとなく胸がジーンと温かくなるもの、悲しくて苦しくなるもの、色々でした。

私には結局一人法師が何なのかよくわかりませんでしたが、哲学的な教えや、癒やしも感じる物語でした。不思議な世界観でした。

191.遥かなる水の音 村山由佳

『病気で亡くなった周の遺言〈僕が死んだら、その灰をサハラにまいてくれないかな〉、この願いを叶えるために、かつて周がたどった道を選び、4人の男女がサハラへ向かう。

パリの旅行代理店で働きフランス人と同棲をしている周の姉・緋沙子、周の同級生で曖昧な関係を続けている浩介と結衣、そしてパリで周と一緒に暮らしていたジャン=クロード。

同性愛者だった周には心にしまい込んだ愛する人がいた』

とっても切ない愛の物語でした。周の思いが辛くて・・最後は切なくて、温かくて大泣きしました。いつかもう一度読みたい作品です。

大きなうねりのある展開ではなく、静かに流れるような物語でした。劇的なことは起こらないけれど、周を含めた5人のそれぞれの思いが丁寧に描かれて深く届き、心を揺さぶられました。

周の灰をサハラに届けた4人はその行程のなかで自分を覆っていた殻を破ることができたし、人生の新たな局面を迎えます。

パリからスペイン、モロッコへの旅は臨場感あふれエキサイティングで楽しく、エキゾチックなイスラム文化に包まれアラビア語の美しい響きを感じる、そんな旅行記の側面もありました。

と同時に様々な愛のかたちが描かれ、奥が深く質の高い恋愛小説でした。

最後に緋沙子は同棲しているアランとの関係を冷静に受け止めます。二人の間に愛があるとしても、彼は自分を満たしてくれない・・彼女がずっと抱えていたモヤモヤへの結論。共感できたし、切ないけれど緋沙子の決断に拍手でした。

いつも同じ場所にいては気づかないこともある。

4人を変えたサハラを私も実際に見てみたいと思いました。神々しい月の輝きやこぼれ落ちそうなほどの数多の星、そして静けさ、夜の闇はどんなでしょう。

読後の満足感は高く、心から読んで良かったと思いました。

 

最後まで読んでくださってありがとうございます。