ネタバレあります。
180.余命一年と宣告された僕が、余命半年の君と出会った話 森田碧
『心臓に腫瘍が見つかり余命一年と宣告された秋人。勉強にも身が入らず、自分は世界一不幸な高校生だと投げやりになっていた。
ある日、病院でスケッチブックを持った少女・春菜に出会い、彼女の描いた絵に釘付けになった。
彼女は天国を描いたと言い、自分はあと半年の命だと話す』
余命宣告をされている二人の儚い純愛を描いた物語です。泣く小説なのだと思いますが、私は全く泣けませんでした。
半年間だったけれど恋はなにより二人を勇気づけただろうし、二人で過ごした時間はかけがえのないものだったと思います。
そう感じながらも、文章が淡々としていていたからか感情移入も出来ず、物語に引き込まれることもなく終わってしまいました。
主人公の二人よりも親の気持ちを思うと辛かったです。
二人の恋を思うと悲しいけれどエネルギーや輝きも感じました。ガーベラの花言葉は素敵でしたし、とてもキレイな物語でした。
秋人が自分の人生を生き切ってくれて良かったです。
181.さがしもの 角田光代
『18歳で上京することになり古本屋に本を持ち込む。店主に「これ売っちゃうの?」と聞かれた本が一冊あったが全て売り払った。
ネパールに一人旅をした際、ポカラという街で古本屋に入る。あの時「売ってしまうのか」と聞かれた本と同じ題名の本を見つけ手に取る。本の最後のページを開いて驚いた・・まさにあの時自分が売った本だったのだ。(旅する本)』
本をテーマにした短編集。ファンタジックな作品が多く不思議な世界に引き込まれました。
どの物語も雰囲気があって面白かったですし、しみじみと心に染み渡りました。サクッと読めて、ちょっと気分を替えたい時にちょうどよかったです。
182.水を縫う 寺地はるな
『高校生の松岡清澄は手芸や刺繍が好きで学校でも友達の輪に入れず浮いた存在。
姉は結婚を控えていて準備に忙しい。しかし子供の頃のトラウマから可愛くフェミニンな服が苦手でウエディングドレス選びも難航していた。
清澄は姉好みのウエディングドレスを自分が作ると宣言する』
家族の物語であると同時に固定観念へ疑問を投げかける物語です。
少しささくれ立っていた家族関係も、それぞれが自分を見つめ直しお互いを理解し尊重することで変わっていきます。自分を信じて進む姿は勇敢でしたし、温かい物語でした。
ただジェンダーの概念を覆すという意味では内容が淡白で深みはなく、焦点があやふやだったかなと感じました。登場人物のキャラももう少し掘り下げて際立たせて欲しかった。
私はヨシッ!と水泳教室に通うことを決めた祖母が印象に残りました。離れて暮らしている父親もいい味だしていて悪い人ではなくて良かった。

183.向日葵の咲かない夏 道尾秀介
『小学4年生のミチオは夏休み前の終業式の日、先生に届け物を頼まれ欠席していたS君の家に行く。そしてS君の首吊り死体を発見する。
急いで学校に戻り先生に見たことを話し、警察と先生がS君の家に駆けつけた時には・・S君の死体は消えていた』
題名からは想像出来ない内容でした。
私はミステリーと思っていたのですが、ホラーに近い。最初の数ページを読み怖くなって、途中離脱も覚悟で読み進めました。
最後まで読みましたが、最初から最後まで気味の悪い内容で思い浮かんだ言葉は「グロテスク」。
ただ読み手の固定観念を逆手に取るようなトリックや独特のプロットは流石だと思いましたし、こういう面白さにハマる人もいるだろうと思います。
読みながら違和感が多々ありました。S君とは?妹が変?
どういう事?と思いながら最後まで引っ張られるように読みました。最後まで読んで私の固定観念が作っていた違和感はキレイに取り除かれてスッキリしました。真実に驚きましたけど。
隠したいこと、忘れてしまいたいことは誰にでも一つや二つはあるでしょう。それを勝手に自分の都合の良いように取り繕って心に仕舞込むこともある。
読み終わって自分にもあるそんな嫌な部分を晒されたようでなんだか落ち着きませんでした。
単に暗い物語というのとは違う、狂気や邪悪さが漂う面白いとは言い難い、お薦めもしにくい作品です。
でも読まないとわからない不思議な世界、怖いもの見たさで読んでしまうある意味魅力ある作品とも感じました。
驚きの内容で唯一無二、ガツンときた作品でした。
最後まで読んでくださってありがとうございます。