ネタバレあります。
175.スポットライトをぼくらに あさのあつこ
進路に悩む中学生を描いた物語。
登場する3人はかなり個性的。個性的にもかかわらずあまり魅力を感じることが出来ませんでした。同じくらいの年齢の人が読めば違うのかも知れませんが感動もなく終わってしまいました。
成人しても友情はそのままだったことは嬉しかったかな。
176.和宮様御留 有吉佐和子
『親のいないフキはの橋本家の下女になった。ある日観行院(和宮の生母)に呼ばれ、桂の御所(和宮の暮らす御所)に赴く。そして訳もわからないまま、徳川家との婚姻を控える和宮の替え玉にされてしまう。
多くの習い事、自由のない縛られた生活の中でフキは次第に笑顔を失って・・』
和宮替え玉説をテーマにした歴史小説。徳川家と皇族の婚姻=公武合体に巻き込まれた少女、女たちの物語です。
和宮の降嫁は歴史的事実。そしてこれはフィクションですが、かなり真実味もあるようで・・。
「御留」とは覚え書きという意味です。
物語はドラマチックな展開で引き込まれました。御所から江戸城までの道中で和宮の身代りは二人、2番目の身代わりが江戸城に入りました。
最初から文中に御所言葉が多く使われ、読みにくいし理解しにくく、苦戦を強いられましたが、この言葉のおかげで独特の雰囲気を味わうことが出来ました。この小説の大きな魅力の一つです。
替え玉となったフキを取り巻く女たち=御所の女官や大奥の女たちのバトル、ねちっとした嫌がらせみたいなものも描かれていて、楽しいとは言い難いですが面白く読みました。
とにかくフキが不憫です。出だしの天真爛漫なフキを知っているからこそ辛い。
フキの儚い人生を思うと、逃亡した和宮の人生はどうだったのだろう?幸せだったんでしょうか?
本格的な歴史小説、読後の満足感はかなり大きく、機会があればもう一度読んでみたいです。
177.旅猫リポート 有川浩
『宮脇悟は車に撥ねられ怪我をした野良猫を助け、ナナと名付けそのまま飼うことにした。そして仲良く5年間暮らした。
しかし悟はナナと一緒に暮らせなくなり、猫をもらってくれる友人を訪ねる旅に出る。
幼馴染、中学校の同級生、高校の同級生・・ナナとお見合いをしてもらうが、なぜかうまくまとまらず・・』
旅人ならぬ旅猫ナナが旅の様子、お見合い相手をリポートしてくれます。
猫目線の語り口が楽しかった。猫って本当にこんな風に考えているのかなぁと思いながら読みました。
猫だけでなく動物に対する著者の深い愛情が伝わってきて心が温まるストーリーでした。
最後は本当に泣けて泣けて・・。悟とナナの絆が強いからこそ、胸が締め付けられる最後でした。

178.いけない 道尾秀介
『市の東端にある弓投げの崖は地方有数の自殺の名所となっている。死者の霊に誘い込まれるので絶対に崖を見てはいけないと言い伝えられていた。
車で崖の付近を走行中の安見邦夫は前方の車の急ハンドルを避けようとして事故になってしまう。
前方の車の男たちは瀕死の邦夫を助けることもせず、単独事故に見せかけようとしたばかりでなく、邦夫の顔面をハンドルに叩きつけ・・。
事故の捜査が難航する中、容疑者の一人が事故現場で殺された』
夢中になって読みました。
一つ一つのエピソードの最後に真相が描かれていないので、自分で推理しなくてはいけません。
1章は普通に読んでしまい最後に少し遡って読み返す事になったので、2章目からは注意力も思考もフル回転させました。
最後に著者の種明かしを読んで納得するというのではなく、読者も文脈の中に隠れていているヒントから謎解きをするという体験はワクワクしました。
本物の刑事もこんな風に些細なことにも注意を払って捜査するんだろうか?と思いながら楽しみました。
しかしそれぞれの事件の真犯人はまだ捕まっていない・・殺人犯が近くにいると思ったら、とても平和な街とは言えません。沸き立つような怖さがありました。
179.かがみの孤城 辻村深月
『中学1年生の安西こころはイジメが原因で不登校になってしまう。母親が申し込んだ不登校児などを受け入れるスクールにも行くことが出来ないでいた。
ある日、いつものように自分の部屋にこもっていると大きな姿見(鏡)が光っていることに気づき、手を伸ばすとそのまま鏡の奥に吸い込まれてしまう。
同じようにして集まったこころを含む7人の中学生達は鏡の中の城にいる狼の面をつけた"オオカミさま"にある提案をされる。
「城の中に隠された鍵を見つければ、一つだけどんな願いでも叶えてやろう」
どうして自分たちが選ばれたのか?
こころはしばらくの間この不思議な城に行くことをためらっていたが、自分の願いに押されるようにまた鏡の中に入っていく。
こころの願いは自分をイジメた子がこの世から消えること』
とても面白かったです。最初は主人公が中学生なので、私の歳で共感できるか、物語に入り込めるかと心配していましたが、まったく余計な心配でした。
隅々まで考え尽くされていて完成度の高い作品。最後は何もかもがピタッと収まるべきところに収まって気持ちが良かったです。
ファンタジー、ミステリー、アドベンチャーの要素が盛り込まれ、その中で親子の関係、友情、悩み、葛藤など盛りだくさんの内容で、かなりの長編ですが最後まで飽きることなく一気に読み終えました。
それぞれ心に傷を持った中学生たちがこの城に集まって友情を深め、いつしか絆ができ、少しずつ心が癒やされ成長していく姿に感動しました。7人のキャラも際立っていて楽しかったです。
クライマックスはスピードも迫力もあってドキドキの展開。手に汗握るようで圧巻でした。
いよいよ城が閉じられる時、それぞれフルネームで名前を教え合い現実に戻って行くのですが、たったそれだけの事でも彼らが一緒に過ごしたかけがえのない時間の濃さを思うと、もの凄く胸が熱くなる瞬間でした。
現実に戻れば城での記憶はなくなるルールですが、ただ一人記憶を残していて・・。これがまたドラマチックで素敵な彩りになってます。
城での記憶を持ち帰った子は皆の名前をすぐにメモしたかしら?それなら・・と妄想が膨らみます。
続編があっても面白そう。
最後まで読んでくださってありがとうございます。