以下ネタバレあります。
【165】流浪の月 凪良ゆう
『のびのびと育った更紗だったが父親が亡くなると生活が一変した。母親に捨てられ伯母の家に引き取られ、そこの息子から性的被害を受けていた。
家に帰りたくないと思う更紗(9歳)はある日公園で優しく声をかけてくれた青年(19歳)・文の家に行くことにする。更紗は救われた気持ちになった。
二人の共同生活が始まるが、更紗が帰らないことで女児誘拐事件に発展してしまい、文は加害者として捕まってしまう。文には人に言えない秘密があり・・』
それぞれの心情がわかりやすく描かれている繊細な物語でした。
「愛」の形に決まったものはなく、自分の心に素直に従っていい、居心地の良い場所かどうかは本人だけにわかること。
恋人でもなく兄妹でもなく、友達とも違う関係。「愛」というより「魂」の結びつきなのか、こういう関係もあってよいでしょう。
更紗と文はそれぞれが抱える過去や苦しみから完全に開放されることは無いのかもしれないけれど、それでも癒やしあえる人に出会たことは奇跡かもしれません。そして新たに梨花という理解者も得ました。
読みながら彼らの周りの人々の干渉が鬱陶しいと感じましたが、どんな時にも無関心でいていいということでもないと思うし、難しいですね。
私自身も文のことを理解できたかと言うとそうではなく、また更紗にはもどかしさも感じました。
後を引く暗い内容を想像していましたがそれほどでもなく、読後感は悪くなかったです。
【166】with you 濱野京子
『中学3年生の悠人は家を出ていった父、優秀な兄、自分にはあまり感心を示さない母・・そんな家庭環境の中で息苦しさを感じ、生きる意味も見出せない。
ある日いつもの夜のランニング中に公園で一人ブランコに座っている女子を見つける。何か悩んでいるのか?悠人は気になった。
彼女は別の中学の2年生、朱音。少しずつ話をするようになり、彼女が母親の介護、妹の世話や家事を一人でしていると知る。悠人はなんとか彼女の力になりたいと思うが・・』
中学生の恋物語ではありますが、ヤングケアラーもテーマになっています。深刻で重い内容を青春恋物語を絡めてわかりやすく描いていて読みやすいです。
課題図書にもなったそうですが、朱音を通して具体的な状況が描かれていて、ヤングケアラーについて理解できるようになっています。
ヤングケアラーについては今はその存在が認識されつつありますが、当の本人にしてみれば家庭の事を他人に話すのも憚られるだろうし、また勝手に踏み込まれるのも嫌だろうし、手を差し伸べるのも難しいです。
まずは相談しやすい環境が大切かなと思いました。物語では悠人は母親に相談します。ヤングケアラーに限らず悩みがあれば近くにいる信頼できる大人に自分の気持ちを話してみるのがいいでしょう。
物語では悠人が少しずつ成長していく姿は頼もしかったです。自分を大事にしつつ、他人も思いやれる悠人はかっこいいです。

【167】夜のふたりの魂 ケント・ハルフ
「ようこそ、ヒュナム洞書店へ」に登場する小説で興味を持ちました。とてもしっとりとした素敵な物語で良かったです。ヒュナム洞書店にピッタリの作品だと思いました。
『ある日、70歳のアディーは近所に住むルイスを突然に訪ねて提案をする。長い間独りで寂しくて眠れない、時々私の家に来て一緒に寝てくれない?夜を乗り切りたいと。
戸惑ったルイスは考えさせてほしいと返事をするが、翌日髪を短く切り身繕いを整えて、パジャマと歯ブラシを持って夜彼女の家の裏口をノックした』
ケント・ハルフはアメリカの小説家。夜に話をしながら過ごすお年寄りを題材に物語を書きたいと思ったのだそうです。映画「夜が明けるまで」の原作であり、ハルフの遺作となった小説です。
物語の中でルイスの年齢ははっきり出てきませんが、アディーと同年代のようです。二人で過ごす時間が日常の出来事とともに静かに流れていきます。
過去の後悔や今ある心配事、その日にあったなんでもない事を夜に話すことでそれぞれの心の緊張がほどけいき、次第に強く結びついていきます。
夜の暗くなった中で話をするというのがいいですね。暗い中でなら何でも話せるのかもしれません。こういう関係もありだなと思いました。
物語の中ではもちろん噂にもなる二人ですが、堂々としている所がかっこよかった。二人がとても生き生きとしていて魅力的でした。
アメリカのダイナミックな風景も思い浮かび、アメリカの日常生活、風や空気も感じられるような文章でした。心も洗われるようなストーリー、心温まる人間関係、読みながら心地よかったですし心にしみました。
作中に出てくるルートビアフロートすごく飲んでみたいです。アメリカでは定番の飲み物だそうですがルートビアの上にアイスクリームですか?どんな味でしょう。
【168】白夜行 東野圭吾
『廃墟で質屋の店主が殺された。容疑者の一人としてマークされていた西本文代はガス事故で死亡してしまう。そして事件は迷宮入りとなった。
その後西本文代の一人娘・雪穂は裕福な親戚に引き取られ、美しく成長し名門女子学校に入学する。
一方、被害者の遺族である質屋の息子・亮司は頭脳を活かして主婦の売春やゲームソフトの偽造など怪しい仕事に手を染めていた。
成長した二人の周りでは次々に事件が起こる』
長編ですが、中だるみもなく一気に読み終えました。
主人公の雪穂と亮司の二人の感情はわからず、行動だけが描かれているにもかかわらず、二人の心の底まで見えるようでした。
途中まで来ると薄々状況がわかるようになりますが、なんとも空恐ろしい物語でした。
別々に歩んでいたと思っていた二人が、実は並んで共に歩いていたとわかると複雑な心境になりました。二人がお互いに癒やしの存在であるなら良いのですが、抗えない運命に引き寄せられて闇に落ちてしまったようで不憫でした。
雪穂と亮司はもしかしたら純粋な気持ちで結びついているのかなとも思いましたし、多少の同情心も湧きましたが、やはり亮司も雪穂に操れれていたんだろうと思います。
スッキリとしない終わり方ですが、それも納得出来ました。雪穂は許しがたい悪女でしたし、裁けない罪に怒りも感じましたが、その理不尽さも含めて面白かったです。
最後まで読んでくださってありがとうございます。