中国ドラマでよく見る手を温める道具として登場する取手のついたもの、可愛いなぁと思っていました。
息が白くなるほど寒い日にこの道具を手渡しするシーンなど、とても愛情を感じます。手だけでなく心も暖めていますよね。
何という名前なのか調べたら「手炉」というものでした。そのままのネーミングでした。
劇中では手炉の中に直接火の回った炭をポコっと入れて使うシーンが多く見られますが、いつも不思議に思ってました。
どう見ても金属製の手炉ですが布で覆って持つわけでもなく、それでは周りが熱くなってくるだろうから火傷するんじゃないか?と思ったのです。
調べたら、工夫されていて大丈夫なようでした。当たり前ですね。😅
画像:tbw-xie.com
手炉は冬に手を温めるために使われるカイロ的なもので、ほとんどが銅でできています。
中国では長い歴史があり、春秋時代に発明されたという説や隋の時代に煬帝に捧げるものとして作られ煬帝が「手炉」と名付けたという説があります。
唐の中期には役人や宦官の家財道具の一つになっていたそうで、筆を持つ時にかじかんだ指先を暖める道具で机の上に用意されたものだそうです。その後だんだんと一般の人へも広がりました。
明代に入ると製造技術が発達し清代にかけては有名な職人がたくさん登場し活躍しました。美しい装飾で最盛期を迎えましたが、清が終わるとともに衰退しました。
ほとんどの手炉は高さ18cm、長さ15cm、幅10cm。基本的な形は円形と楕円形です。そしてその構造は、例えば魔法瓶のように外枠と内側の本体の2層構造になっていて蓋は網目状で炭の火が消えてしまわないようになっています。
2重構造なので、火の元を直に入れても手を火傷するようなことはないのですね。
そしてハンドルをつけて持ちやすいように進化しました。
また外枠は職人達の技を競う部分でもあり、花や鳥、幾何学模様など様々な美しい文様が施されました。時代とともに実用的でありながら観賞用の芸術品ともなったわけです。
この手炉は手を温める道具ですが、それだけでなくお香を炊くということもあったようで、これを袖の中に入れて着物に良い香りをつけるという使い方もありました。
一時期忘れられた手炉ですが、今ではコレクターもいてまた人気が高まっているようです。
暖房器具が発達した今でも冬は寒くて体が縮こまるのですから、何百年も前ならなおさら寒さには苦労したでしょう。
とても小さな暖房器具ですが、寒い時はこの手炉を抱えてさぞかしホッと出来ただろうと想像します。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
想像力で心を豊かに。
では、また。